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「寝坊した、マジでごめん」
「昨日夜遅かったしね,僕も起きたのさっきだよ」
椎名は笑いながらキッチンに立っていた
コンロにやかんをかけてコーヒーでも入れようとしながらすっかりここの生活が染み付いていることを実感する
「身体痛い...ベットに入らなかったからだ」
彼は少年を抱き抱えたままイスに腰掛けてけだるそうに首を捻る
「なんで?風邪引くよ」
「なんか昨日あんな話したから...」
言いかけて口をつぐんだ
昨日の夜、椎名にすべてを打ち明けた後、話し疲れて寝室に戻るとベットにはすやすやと眠る少年がいた
穏やかに眠るその顔がかわいくてすぐにでも抱きついて一緒に寝ようと思ったがシーツをめくろうとして手を止めた
こんな自分がまるで当たり前のように少年に寄り添ってその身体を抱き寄せてもいいのだろうか
今更だけど、全てを吐き出した後だからこそ、自分がどれだけ少年に相応しくないのか分かってしまった
思いとどまって床に座り込みベットにもたれかかる
少し肌寒かったけれど、寝顔を見ていればなんだか心が温かくて満足だった
目を閉じて明日もこんな穏やかでいられるようにと願った
「いつ帰るの?」
「そうだなぁ...早い方がいいしね」
少年は2人が相談するように話をしているのを黙って聞いていた
何を言っているのかはわからない
ただ難しい話をしている気がしてジャマをしないようにジッとしていた
「今日はね、僕が朝ごはんを作ってみました!」
そう言って椎名はお皿をテーブルまで運んできた
その皿の上にのったものを見るなり彼は怪訝そうな顔を向ける
「...これ...なに?」
「目玉...焼き?」
用意した椎名自身も疑問形で答える
それもそのはずお皿にせられた”目玉焼き”と題されて運ばれ来たものは目玉の部分は崩れて白身の部分も焦げていた
「目玉がないじゃん」
呆れるように冷ややかな視線を向ける彼に椎名は弁解するように説明する
「ちょっと焦げたけど大丈夫だよ!味は変わらないって!」
「先生って頭いいのに、料理できないんだね。」
すると少年は彼の膝から乗り出すように皿にのせられた目玉焼きもどきをじっと見つめている
「あ、ユウくん、気になってる!食べてみて?!」
少年は眉毛を寄せて考え込んでからさらに首を傾げて彼を見上げた
「ぷっ!なにこれ?って顔してる」
彼が吹き出しながら興味深く眺める少年の頭を撫でる
「先生が作った目玉焼き。美味しそうだね」
「う?...だー...あ?」
「めだまやき」
言えそうで言えない少年にゆっくり教えてあげている
そんな姿を朝から見れて、苦手ながらもやって良かったなと椎名は思った
「なんかミツルくんすっごく素直になっちゃったよね」
「は?...はやく食べよ。ねー、ユウ?」
ごまかすように彼は少年の食事の世話を始める
三人分のトーストを焼いてコーヒーを入れる
少年にはオレンジジュースを入れてあげてシンプルだけどちゃんとした朝食だった
特別なことなんてしなくていい
ごくごくありふれて何にもないような日々をこうやって3人で過ごしていけたらいいと思う
それを幸せだと感じられるのが目指すところなのではないだろうか...
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