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少年はイスに座りながら床に届かない足をプラプラさせて大人しくしている
目線の先にはキッチンにいる彼の姿
カウンター越しに見える彼が時々こっちを見て目が合うと微笑んでくれる
それが嬉しくて絶えず彼を目で追っていた
キッチンで彼が作業している間少年はずっとその後ろにべったりと張り付いて何度引きはがされてもウロウロと付いて回っていた
包丁や火を扱うことに危険を感じて彼が少年をリビングまで連れてイスに座らせて待っているように言っても嫌がってすぐにイスから降りてまた傍に来てしまう
彼は再度、少年をイスに座らせて今度はゆっくり分かるように語りかけた
「ユウがケガしたら嫌だからここいて?」
「....?」
「すぐ戻ってくるから待ってて?お願い」
彼はしゃがみこんで話をしていたために少年よりも目線が低く見上げるように見つめていた
見下ろされることしかなかった少年はなんだか不思議で仕方なかった
けれど微笑みながらゆっくり優しい言葉で説明されてなんとなく理解できたようだった
「待ってて」はいつも聞かされていた言葉 待つのは少年ができる限られたものの一つ
彼は離れるときに少年の小さな小指を自分のと絡ませて何回か揺らして笑った
「すぐ戻るって約束するよ」
少年にとって「約束」はよくわからない
今まで交わしてもらったことがなかったからだ
彼が少年にさせるのは命令と服従
決められたことをするのは約束ではなくそこに少年の同意が存在したことはない
だけど最近なんとなく分かったような気がしていた
なぜなら「約束」というと彼は必ず小指を絡めてくれるからだ
小指を絡めるととてもいいことが起きる...少年は自分の中でそう認識していた
小指を絡めるようになってから彼はとっても優しくなった
怒らなくなって、殴らなくなって、一緒に寝てくれるようになって、遊んでくれるようになった
この指は願いを叶えてくれるもの
本当は...
本当はずっと我慢していたから
ずっとずっと優しくしてもらいたかったから...
しばらくして食欲をそそる匂いが部屋中を満たすと少年のおなかがキュルルと音を立てた
「できたよ!食べようか」
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