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「あぁぁぁぁ!!やぁぁぁ!」
ベットに上半身を押さえつけられた少年は絶叫しながらもがいていた
さっきまで虚ろな目で放心状態だったとは思えないほど逃げ出そうとする力が強い
「だーかーらー、動くなっていってんじゃん」
「やぁぁあぁぁ!!」
押さえつけられた腕に身体ごと乗るようにしながら少年の手を開かせる
彼が寝室を出て持ってきたものは爪切りで、その刃は今、少年の爪を持ち上げている
けれどいざ力を入れようとすると死に物狂いで逃れようとするから上手くいかない
仕方なく彼は少年が身動き取れないように身体ごと乗り上げた
「い...ぃぃい」
完全に動きを封じられてしまった少年は悲痛な声をあげて精一杯の抵抗を見せるが彼は容赦しなかった
右手は以前、三枚爪が剥がされている
残るは二枚、親指と小指、そのうち小指は爪があるけれど骨が折れているために触れるだけでも激痛が走る
「ちょうどいいから右手にしよう」
ケラケラと笑って右の小指の爪に爪切りの刃をたてる
「いぁぁぁ!!」
すでに痛い指先に次の痛みの恐怖を思うと少年はパニックを起こしたように叫び出した
指先がガタガタと震えてひっかけたはずの刃が外れてしまう
「すごい震えてるね、怖い?」
「ぅ...ぅぅ」
なんでこんなに怖いんだろう...嫌だなんて思ってはいけないはずなのに...
押さえつけられて身体が痛くて、ベットに埋もれた顔が苦しくて息ができなかった
今までも爪は剥がされてきたし、いつものことだったのに...
「いつものこと」がなんだか遠くに感じていた
すべては優しくて甘い暖かな日々を知ってしまったから
「痛いの嫌?」
彼にそう聞かれた少年は思わずコクンと頷いた
どうしても嫌だった、嫌で嫌で仕方なかった
「そっか」
彼は一言返事をするとひっかけた爪切りの刃を肉の隙間に入れ込んだ
容赦なく、躊躇することなく一気に力をかけられて小さな影が目の前を飛んで行った
「いぁぁぁっ」
燃えるような痛みで少年の全身に脂汗が噴き出していく
彼は今度は親指に刃を突き立てるとゆっくり確実にえぐるように押し入れていく
「いぃぃ...ぎっ...」
「さっきのは先にイッた分でこっちは頷いた分ね?」
「...?」
「痛いに頷けなんて誰も教えてねぇんだよ」
そう言うと彼は一気に突き立てた刃を持ち上げて爪を皮膚から剥がしていった
「....!!!!」
気が狂いそうな痛みは指先から全身を駈け廻っていく
痛い、怖い、嫌い...3つは否定できない言葉
好きは肯定しかできない言葉
覚えたのはこの4つでそれ以外はいらない言葉
知ってはいけなくて、覚えてはいけなくて、好きになってはいけなくて...
何度も何度も殴られていっぱい泣いてやっと...やっと覚えたのに...
なんで忘れていたんだろう
なんで頷いてしまったんだろう
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