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言いたい事
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ドキドキする。
生徒会室の扉の前に立って、中にいる人たちのことを思い目を閉じる。
「じゃ、明日生徒会室に来てくださいね」
昨日桜月君はそう言った。
とういう事は、明日生徒会室には紀田君たちが、いるのだろう。
この一枚の扉の向こうに、紀田君たちはいる。
「怖い、な」
「大丈夫だよ」
「えっ、二ノ宮君!?なんで、」
小さく呟いた言葉は、二ノ宮君に返された。
てっきり一人だと思っていたから、隣から聞こえた声に驚いた。
「俺が行けるのはここまでだけど、一緒にいるから」
ぎゅっと手を握られて、一瞬焦ったけれど、ゆっくりと握り返す。
「うん、」
「ここにいるから」
「うん」
「行ってこい」
「行って、きます」
するりと握っていた手を離し、扉のノブを握る。
チラリと二ノ宮君を見ると、笑っていた。
「会長……」
部屋に入ると、久しぶりに見る3人の顔。
「久しぶりだね」
少し、やつれているのか。
前に見た時より疲れた顔をしていた。
気まずそうに顔を伏せる3人に、苦笑した。
「顔をあげてよ、紀田くん橋倉くん、藤塚君」
僕がそう言うと、ゆっくりゆっくりと、顔をあげた。
なんで、と橋倉君が口を開いた。
「なんで、まだ俺らに構うのさ。
もう、リコールでもなんでもすればいいのに」
「そんなこと…」
できないよ。
「構わないでくださいと言ったはずです」
酷いことを言っている。
けれど、その顔は、言っていることとあまりに違いすぎる。
二ノ宮君のおかげか、今の僕は比較的に冷静だった。
「僕はそれにはいなんて返事した覚えはないよ」
「私たちがあなたにしたこと、忘れたんで……」
「忘れてなんかないよ。」
忘れられない。
けれど、
「なら、…な、んで…?」
僕はね、と言葉を続ける。
「僕はね、別にみんなを責めるために話に来たんじゃないんだ。
僕は、謝りたいんだ」
は?とみんなの声が重なった。
「仕事のためだったとはいえ、酷いこと言ってごめんね。脅したりして、ごめんね。
頼りない会長で、ごめんね」
「な、…」
「僕は、二ノ宮君みたいにうまくみんなをまとめられないし、紀田君みたいに仕事も早くない。橋倉君みたいに生徒たちをスムーズに動かしたり、藤塚君みたいに和ませたりもできない。
何にもできないけれど、一緒に頑張れて嬉しかったんだ」
「まって、待ってよかいちょ……それじゃ全部会長が悪いみたいな……」
「いいんだよ。橋倉君たちがそう思うなら思っていいんだ。
けどね、今は僕を信じて支えてくれる人がいるんだ。
とても、大切な人がいる。
もし、納得がいかないんだったら僕をリコールしてもいい」
だから、
「もとから僕はいなかったんだから、はじめに戻ったんだと思ってくれていいから。
また3人が笑ってるところ、みたいな」
僕がリコールされたって、懸念すべきものは、怖いものはもう消えた。
「おかしいですよ、そんなの」
しばらくの沈黙の後、苦しそうに紀田くんが口を開いた。
「今回は完全に私たちが悪いのに、なんで、なんでそんなこと言えるんですか」
そんなこと聞かれたって。
「みんなのこと、大好きだからかな」
良いところをたくさん知っている。
探さなくても、すぐにわかる。
「みんなのしたいことは、僕にできることならなんでもするよ。
でも、もう壊れるわけにはいかないけど」
みんなをまとめることが、会長としての義務だと思っていた。
けれど今は、
「一人の人として、心配なんだよ。」
このままじゃ、本当に紀田君たちがどうなるかわからない。
ただでさえ、自分のことも二ノ宮君達に手伝ってもらわないと解決できないのに、僕じゃ紀田君たちの力になんてなれない。
「紀田君たちには、また生徒たちの前に立ってほしい。
みんな、そう思ってる、それを望んでる」
また下がった3人の顔に、話しつづける。
「僕が言いたいことは、それだけだよ」
重い沈黙。
けれど僕は、もうそれに耐えられれ力を持ってる、
「やっぱりあなたは、おかしい…」
そう言った紀田君に、思わず小さく笑ってしまった。
「なんでかな、最近よくそう言われるよ」
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