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握るか、握られるか
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「委員長」
ずっと、生徒会室のドアを向いて静かに立っている二ノ宮に、桜月は声をかけた。
「風紀委員室で待っていたらどうですか」
いや、と委員長は口を開く。
「ここで待っていると言ったんだ」
本当に、と思う。
「頑固なところは似てますねぇ」
「あいつは大丈夫だろうか」
「さぁ」
「何か、されてないだろうか」
「さぁ」
「泣いていないだろうか」
「さーぁ」
「お前、聞いてんの…」
「委員長」
心配することは悪いことではない。
というか、良いことだとは思うが。
「中のことなんて、会長たちにしかわかりませんよ」
委員長の眉が少しだけ揺れた。
「心配するのもわかりますが、きっと大丈夫です。
何かあったらちゃんと会長が知らせてくれますよ」
過保護すぎるのも、どうかと思うが。
そう伝えると、委員長は小さく苦笑した。
「だよなぁ…」
なんだ、わかってるんじゃないか、と思う。
「好きすぎて、離したくないって?」
ニヤニヤしながら、そう尋ねた。
「おっ、まえ、なぁ…」
少しだけ慌てた委員長にますます口角が上がる。
面白い。
これだから、委員長をいじるのはやめられない。
「でも」
「あ?」
「会長優しいですからねぇ。
仲直りしたら、みんな惚れちゃうかもですよ?」
「…は?」
「いやいや、総受けも美味しいと思うんですけどね?俺的に。
まーでも、俺は固定派ですから、心配しないでください」
何を言っているのかわからないという顔で、けれどとても不安そうな顔で見てくる委員長にニヤニヤが止まらない。
「ちゃぁんと、手を握っていてあげないと、迷子になりますよ?」
そして早くラブラブしろ。
「つまり、取られないようにしろって、忠告か?忠告してるのか?」
「おや、珍しく物分りがいいですね。」
そうからかったつもりだったけれど、
ハンッと委員長は笑った。
「誰が離すかよ。」
…これはこれは。
わかってはいたけれど、だいぶ会長にご執心中らしい。
「ったく、美味しすぎますよ」
小さく呟いた声は委員長には聞こえていなくて、あ?と返ってきた委員長の声に、
「リードを握られるのは、委員長の方ですかね」
と返しておいた。
「誰が犬だこら」
「字的に、イヌですかね?」
「お前もう黙ってくれ…」
「ははっ」
あーもう、本当に、
「楽しいなぁ」
「俺は全く楽しくねぇよ」
「でしょうね」
さて、俺も一緒に会長を出迎えたいところだけれど、隣の殿方が快く思わないだろうな。
「俺はまだ仕事あるんで帰りますね」
本当はないけれど。
ここは委員長をたててあげないと。
あ、げ、な、い、と。
「あぁ」
「頑張ってくださいねー」
「棒読みでよく言いやがる」
「頑張ってくださいねっ!」
棒読みと言われたから満面の笑顔で言ってやったのに。
「なんか…いっそう怖ぇな…」
酷いなぁ、もう。
くすくす笑いながら、風紀委員室へと足を向けた。
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