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匂いとチョコレート
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上野君が降りていった階段を見ながら、僕は二ノ宮君、と呼びかける。
「ん?」
振り返って、さっきは言えなかったことを言おうと息を吸う。
上野君は凄いや。
いつも僕に勇気をくれる。
きっと、僕は彼に酷いことをしているのだと思う。
けれど、いつもそれに甘えてしまう。
僕なんかより、ずっと似合ってる人がいると思うから、上野君も幸せになりますようにと。
「2週間後のダンスパーティで、僕とっ…!?」
踊ってくださいと言う前に、いつのまにか近寄った二ノ宮君に手で口を塞がれた。
え、ちょ、これじゃ言えないんだけど…
まさか、言って欲しくないとか?
「待て、言いたいことはわかってるから、そんな顔すんな」
すぐに手は離れていき、髪をふさりと撫でられる。
あー、と少しだけ顔を赤くしながら、
「俺と踊ってください」
と、髪にあった手を離し、僕へと向けられる。
「あの、えっと、」
まさか、僕のを止めて自分の誘いを言ってくるとは思わなかった。
「よ、よろしくお願いします」
そう言って差し出された手に僕の手を重ねると、ぎゅっと掴まれて引っ張られた。
そのまま二ノ宮君にダイブしたわけだけれど
「俺から言いたかったから、」
「う、うん」
二ノ宮君の胸に顔を埋めて、すーっと息を吸った。
「え、なに臭い?」
「ううん、なんか、二ノ宮君の匂いだなぁって。
僕二ノ宮君の匂い好きだな」
スンスンと、鼻をすする。
あれ、これはこれで変態みたいじゃないか僕。
「………」
「ごっ、ごめん。変態みたいだよね!、気持ち悪かったよね!」
沈黙に慌てて身を引こうと、腕に力を入れたけれど、逆に強く抱きしめられてしまった。
「あうっ?」
「あんま可愛いこと言ってくれるな」
「か、え?」
「……後2週間か」
「?」
2週間?
今から2週間後って、
「誕生日?」
ポツリと言ってしまった。
あ、言っちゃった。
「………直人か…」
ごめんなさい桜月君バレました。
鈴原、と名前を呼ばれて垂れていた頭を上げると、チュッと唇にキスをされた。
「今は、ここで我慢な」
「あ、はい」
「誕生日って知ってるなら話は早い」
意地悪そうな顔を浮かべて、手を引いて階段を下りる。
はっと我に帰った。
「二ノ宮くんっ!」
「なんだ?」
「チョコは、お好きですか?」
「チョコ?」
「はいっ」
チーズ、クリーム、チョコ。
「……好きだな」
「そっか」
チョコ、チョコ、チョコ。
よかった。
「僕も好きなんだチョコ」
えへへ、と笑う。
「そうか。チョコがどうした?」
「え、いや、なんでもない」
バレないように、バレないように。
こっそりと。
君へのプレゼントを。
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