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前兆 桜月side
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あれからほとんど毎日、けれど俺の仕事には支障が出ない程度に保健医は構ってきた。
鬱陶しい、けれど、どこか嬉し……いやいやなんでだ。
昼休み、廊下で。
「さーくらーづきー」
ほら、来た。
「………」
「なぁ、桜月ってばー」
「……なんですか、子供みたいなことしないでください」
体と脳みその年齢合ってないんじゃないのか。
「一緒に昼飯食おーぜ」
「仲のいい職員いないんですか…」
「他の奴とお前っていったらお前とるだろ」
そんなこと、真顔で言わないでくれよ。
「あー、今日だけですからね」
「とか言いながら、毎日来てくれるもんな」
「っ、るさい!」
踵を返すと、そう怒んなってと笑い声が聞こえた。
「昼ご飯買ってくるんで、先戻ってて……」
ピリリリリリリリ
突然鳴り出したのは、電話の着信音。
俺のじゃ、ない。
「あ、俺だわ」
電話を取った後は、あぁ、とばかり返事をしている。
まだ少し時間がかかりそうなそれに、俺はご飯を先に買ってこようと歩き出した。
誰から、かな。
まぁ、あいつも先生だし、大人なんだし、電話くらい普通にかかってくるよな…。
なのになんで、なんでこんなに不安になってるんだ。
「今日は、サンドイッチがいいかな」
などと、その思いを振り払うように。
「桜月!」
もうだいぶ後ろに離れてしまった保健医が、俺を呼んだ。
「なんですか」
「……わり、やっぱ一緒に食えねぇわ」
「は、はぁ?」
あんだけ人を誘っておいて。
今更、
「んな、いまさ………」
気まずそうにする保健医を見る。
そうだ。誰だって、用事くらいあるよな。、
ため息をついて、俺も声を張り上げる。
「そーですか。自分の予定くらい把握しといてくださいね!」
皮肉だ、これは。
急用だと、わかっているのに。
「あぁ、悪いな」
そう保健医は苦笑した。
「また明日な!」
そう、また明日。
明日また今日のように、いつものように誘ってくるのだ。
「なにがまた明日ですか。
昼ご飯くらい、他の誰かと食べてください」
たかが、昼ご飯。
1日食べれなくったってなにも変わらない。
けれど、次の日。
「………静かだな」
珍しく、朝から静かだった。
それは、付きまとうあいつがいないから。
昼休みになっても、顔を見ていない。
廊下を歩く時にすれ違った生徒の会話。
「聞いた?今日二ノ宮先生お休みだって」
「えっ、ご病気!?」
「いや、家の用事らしいけど…」
「………休み?」
珍しい、あいつが学校休むなんて。
てか、また約束破りやがって。
明日もまた一緒に食べようって、あんたが誘ったんじゃないか。
仕方ない、とまた深くため息をついて風紀委員室に向かった。
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