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伝われ 桜月side
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「お前、なんで……」
俺を見て、目を見開いて立ち止まっている保健医。驚いた、という言葉がぴったりな顔だ。
「委員長に聞きました」
「あの馬鹿……」
額に手を当てて、ため息を吐く。
それを見て俺は柄にもなく一抹の不安を感じる。
「来ちゃ、ダメでしたか」
来られたくなかったのか。
そう俯けば、額に置いていた手を今度は俺の頭へ乗せてくしゃりとなでられる。
「さっきの聞いてただろ?」
無言で肯定を返す。
「あんなの見せたくなかったんだよ」
あんなの、とは、先ほどの会話のことを言うのだろうか。それとも美しい女性を適当に遇らう自分のことを言っているのだろうか。
「よかった、んですか」
走り去る女の人は、一瞬でもわかるくらい綺麗な人で。あの会話を聞いていても、もったいないと思っただろう。
「凄く綺麗な人だったのに」
きっとこれは、俺の精一杯の皮肉。
俺を振り回すあんたへの、精一杯の皮肉。
俺には、ない。
「顔だけな」
そう笑って言い切ってしまうあんたは本当すごい よ。顔だけ美人でも、結局あんたはそれに流されたりなんかしないから。ちゃんと、中身を見てくれるから。
だから俺はあんたが好きなんだ。
けれどあんたには、好きな人が、いる。
「あと、学校辞めるなんて聞いてません」
「あー、それ多分あっち側が勝手にしたことだ」
面倒くさいことしやがって、とため息をこぼす保健医。
え、ということは、
「やめない?」
そう聞くと、意地わるそうに口角を上げて
「あんな面白いとこやめるかよ」
そういった。
凄く、凄く、ホッとして力が抜けた。
よかった。
まだ一緒に居られるんだと安心する。
本当、振り回されるよあんたには。
「………甘いなぁ、俺も」
「ん?」
「………す、き」
あんたに振り回されて、それについて行く俺も。
それをわかっていて許せるのはきっと、きっとあんたが好きだから。
「なに?」
聞き返した保健医へ手を伸ばし、襟を掴み上げる。ロマンチックのカケラもないけれど、そんなの男同士で期待されても困る。
「あんたが好きだ」
目を見て。
伝われ。
あんたはもう俺のこと好きじゃないかもしれない。
けど、伝われ、伝われ、伝われ。
好きだ、好きなんだ。
「さ、」
「好き、好き、あんたが好き。ずっと、ずっと前から」
溢れ出したら、止まらない。
ここまでなのかと自分で驚くほどに次から次へと溢れ出す。
「素直になれないのも、あんたが悪い。
あんたのせいだ、あんただから……っ」
あんただから、俺は意地を張ってしまう。
気づいたら保健医の顔が目の前にあって、
「ん、ふっ、!」
急ぐように、唇をかわされる。
…………熱い。
今までも何回かされたことはあったけれど、こんなに熱く感じたのは初めてだ。
ふ、と離された唇をが少しだけ、名残惜しいと感じた自分が恥ずかしい。
「なんで、キスなんか……」
あんたには、他に…
「わかるだろ」
でも、でも、俺はそこまで自信なんて持てない。
「お別れだって、言った……」
俺のこと冗談だって、言った。
「けじめだ。終わるまでの、けじめ」
きつく、きつく抱きしめられる。
「好きな人、いるって……」
「お前だよ。お前だけだ」
顔は見えないのに、真剣さが伝わって。
おれは、俺の気持ちは伝わってるのか。
すっと、保健医が離れていく。
「桜月」
「なに、……?」
「お前、もう帰れ」
「…………は?」
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