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謝罪
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「……、鈴原?」
「はい、鈴原ですけど」
ドアを開けたまま固まってしまった僕に驚いている二ノ宮君。
でもなんだろう、すごく機嫌が悪そうです。
帰りたくなってきた。
「なんだ」
入れ、と目で言ってドアを閉めようとする。
「も、もしかして、用事だったんじゃ」
なら後でいいよと、一歩下がる。
「大したことじゃない」
早く入れ、と促される。
いや、僕これから怒鳴られるんですけどね。
で、どうした。とふかふかのいかにも座り心地の良さそうな椅子に座って僕を見る二ノ宮君に僕は勢いよく頭を下げる
「ごめんなさい」
「は?」
僕のいきなりの奇行に呆気にとられてる二ノ宮。
わぁ、イケメン顏が台無しですよ。
それでもイケメンですけどね。
「その、大変言いにくいのですが…
今日提出の資料、あ、明日までにしていたたげない、かと…」
「…今から行こうと思っていた」
が、何故だと僕を見据える。
あぁ、勇気を振り絞って来たものの、そんな変わらない結果になるような。
「まだ、全然終わらなくって」
「そんなにいっぱいあるのか」
「あ、うん…」
はぁーとため息を突かれるのを聞いてビクリと僕の方が揺れる。
ーため息は嫌いだ。
「わかった。明日までだぞ。4人でなんとかしろ」
「、はい」
いやもう3人いないんですけどね、と心の中で苦笑する。
でも、言えるわけない。
今日来た転校生に3人ともべったりで仕事をしない、なんて。
あれ、でも今日怒鳴られなかったぞ?
「じゃあ、戻るね」
「す、鈴原……!」
「ん?なに?」
ドアを開けてさっさと仕事に戻ろうとすると、少し戸惑ったような声が聞こえた。
僕が振り返ると、あ、いや…と言ってごもごもするから、
「?何もないなら帰るよ?」
とまたドアを開ける。
「っ、具合はっ、大丈夫なのか!」
「具合?」
いきなり少し大きな声を出されて驚く。
でも小さな声で、昼の…と呟く二ノ宮君。
「あぁ、食堂の?大丈夫だよ」
もう十分動けるようになったしね。
「その、、動けないのに、ぁ、あんなこと言って悪かった」
それは、謝罪だった。
二ノ宮が、僕に謝った。
顔を真っ赤にして、複雑そうな顔で。
あぁ、もしかしてずっと気にしてたのかな?
だから今日怒鳴らなかったのかな、と。
「大丈夫だよ。確かに、僕の不注意だったし」
あれは忘れよう、と決めたのだ。
「だが…」
「大丈夫だから!ほら、ピンピンしてるでしょ?
僕仕事があるから行かなきゃ。それじゃ」
口籠る二ノ宮を遮って無理矢理話題を変える。
それに、本当に戻らないと終わらない。
それに渋々といった感じで二ノ宮君がうなずく。
扉を閉めて1人の廊下でふと呟く。
「そういえば、二ノ宮君から謝ってきたのって初めてだ」
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