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リコール。
それは生徒会役員、又は風紀委員としてあるまじき行為をした場合、その人の役職特権を全て取り上げクラスを落とす。
だけではなく、今まで自分たちを慕ってきた人達がいっせいに嫌がらせをしてくる事もある。うん、てか、ほとんどだね。
でも何より怖いのは、いくらその人の家の力にや権力が強くても決定は撤回できず、家の名自体に傷がついてしまうこと。
この学園の力関係は絶対であるが故に、落ちた時の情報の周りは凄いし、酷ければ倒産だ。
僕はそれを、紀田君たちに突きつけた。
そうすれば流石の紀田君たちも仕事をする。
リコールまでしなくても、職務怠慢なんて噂が広まってしまったら紀田君たちの家に確実に傷がつく。
そうなったら、紀田君たち自身もただでは済まないだろう
僕はそんな事になってほしくない。
短い期間だけど一緒に仕事してきて、みんなが凄く優しくていい人だって、知ってるから。
だからまだ間に合うこの段階で、言わば紀田君達を脅した。
「仕事、してください」
紀田君たちは俯いてしまっている。
見えないその顔は困惑しているのだろうか、怒っているのだろうか。
怖い。
けど、
こんなやり方しかできないから。
「リコールされれば、不利になるのは家の方です」
追い討ちをかける。
家の名前を出したら、ピクリと3人の肩がかすかに揺れた。
お願い
「まだ大丈夫ですから」
首を縦に振ってくれ
「仕事、しましょう?」
お願い……
「やめろよ!!!!」
「…………大原くん」
大きな声で見事に空気をぶち壊してくれたのは今の今まで存在を忘れていた大原君。
大原くんには、僕がみんなを追い詰めているように、見えたのかな。
うん、追い詰めてるけど。
3人も「蓮…」と大原くんを見ている。
その目は愛しいような、安心しているような、嬉しいような。
「コイツらを脅して楽しいのかよ!」
違う
「そんな事させないぞ!
大丈夫だからな、翼、成、美樹。俺が守ってやる!おじさんに言えばすぐに…」
違うのに。
「無理だよ。リコールはいくら理事長でも取り消せない」
否定できない。
「ふざけんな!お前、お前最低だな!
行こう翼、成、美樹!こんな奴の言うこと聞かなくていいんだぞ!」
「ちょ、まっ!?」
扉を開けて出て行こうとするみんなを引きとめようとしたけれど、
僕を見た3人の目はとても冷たくて、怒っているようで、憎んでいるようで。
「会長、もう私たちに関わらないでください」
冷たく突き放すのは紀田君。
「リコールも、させないから」
恨めしそうに睨むのは橋倉君。
「かいちょ、…嫌い」
泣きそうな顔でそう言うは藤塚君。
「っ!」
バタンと、扉が閉まった。
視界が、揺れる。
「っ、ふっ……、……」
何も得られなかった、何もかもが変わってしまったこの状態で理解できることはただ1つ。
届かなかったのだ。
僕の想いは3人には届かなかった。
ただこれだけ。
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