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父と子
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「本当にお前は私の邪魔ばかりしてくる」
父さんは、僕のことが嫌いだ。
母さんと結婚する時も僕の存在が邪魔だったらしい。
父さんから暴力を振るわれるのは慣れたけれど、その痛みになれることはない。
僕は父さんのことが怖い。
事実上父となった血の繋がってもいない、昨日まで全く知らなかった人から暴力を振るわれ、色々言われるのが。
だから二ノ宮くんが怒るのはまだ平気だったけれど、この人は違う。
時々、僕を本当に殺そうとしてるんじゃないだろうかって、思う。
1度、母さんが結婚して少し経った時、父さんに廊下でぶつかった。
ただそれだけで僕を地下の暗い部屋に閉じ込めて五日間は出してくれなかった。
首を絞められたこともあった。
「ここへ通うのはいいが家の方に迷惑をかけるなと言ったはずだ」
「はい、すみません」
「私は、お前を鈴原だと認めていないからな」
「いっ!?」
父さんが僕の髪を引っ張って顔を近づける。
その目はすごくすごく冷たくて。
いや、でもその目は僕を映していない。
「今度こうなってみろ。その時はもうお前は鈴原ではない」
「あっ、は、い…」
「はぁ、本当に、その顔もその目もその声も。目障りでしょうがない」
冷たい冷たい父さんの目に僕は震えることしかできない。
スッ、と父さんの手が僕の首に伸びた。
そしてぐっと指先に力を込められる。
「!、はっ、」
「お前がいなかったらどれだけいいか」
息が…できない。
洒落にならない力。
多分父さんは洒落なんかじゃないのだろうけれど。
抵抗したい。
でもできない。
その後が怖いから。
その度に己の弱さを思い知る。
「っ、かは、、」
息が苦しくなってヤバい、と思った時手が離れた。
「学校で父親が息子を殺した、なんて洒落にならんからな」
そう、父さんの気にするとこはそこだ。
自分のキャリアに傷がつくこと。
「はっ、はぁ。す、みませんでした」
一気に酸素が肺に入ってきて、苦しい。
父さんはそんな僕を一瞥したあとすぐに背を向けた。
「その顔、もう見せてくれるなよ」
理不尽だ。理不尽だけれど、
「……はい」
僕は従うしかない。
バタンと扉を閉めた向こう側で、理事長と話しているのが聞こえる。
「もうよろしいんですか」
「はい。この度はご迷惑を」
「いえいえ、まだまだ若いですからねぇ」
もう一度扉が閉まる音がしたから多分出て行ったのだろう。
「遥くん?」
父さんが出て行ってしばらくして、僕が出てこなかったのを不思議に思ったのだろう。
「あ、すいません。すぐでます」
「あぁ、じゃあまた、仕事よろしく頼むよ」
「はい」
理事長の顔は、見ずに通る。
今は、誰にも会いたくない。
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