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何も知らなかった
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二ノ宮くんと生徒会室へ戻ってきて、お互い向かい合ってソファに座る。
少しだけ沈黙が続いた後、先に口を開いたのは二ノ宮くんだった。
「直人に怒られたんだ」
「直人…、桜月君?」
「あぁ。
あの後、鈴原が俺を怒鳴って出て行った後、恥ずかしいがどうすればいいのかわからなくて直人に電話をしたんだ」
きっと、二ノ宮くんの周りには、怒鳴る人も非難する人もいないのだろうと思った。
ああいう風にあたるのは僕にだけであって、他のみんなからは信頼され尊敬され、愛されているのだろうと。
「そしたらあいつ、『なんで追いかけないんですか?馬鹿ですか?あぁ馬鹿でしたね』って言いやがったんだ」
「な、なかなか言うね桜月君」
桜月君はいつも僕に優しいから、二ノ宮くんに言ったことを聞いて、驚いてすこし笑いが漏れてしまった。
あいつは結構言うぞ。と恥ずかしさからなのか、口を少し尖らせながらいう二ノ宮くん。
「『それに、会長は誰よりも仕事してますよ。最近は他の役員が転校生にベッタリなので、全部1人でしてるみたいですし』って言ったんだよ」
「あ、それは……」
「本当か?あの量を1人でしていたのか?」
どうしようか。
まさか桜月君がそんなことを言っているとは思わなかった。
言っても、どうにかなるとは思っていなかった。
こんな、こんな悔しそうな顔で、聞いてくるなんて思わなかった。
「本当だよ。でも、最近は慣れてきた……」
「なんで言わなかった?」
言っても怒られるだけだと思っていた、などと言ったらどんな顔をするだろうか。
「違う、か。俺のせいか」
「ち、違うよ!?」
また気まずそうに目をそらす二ノ宮くんに慌てて否定する。
「それに、昨日大原と部屋に行った時、お前の事色々いわれたけど……その時ふと思ったんだ。
何も知らないんだなって」
頑張ってることも、1人で負担になってることも直人に言われるまで何も知らなかった。
知ろうとも、しなかった。
あぁ、と僕は思う。
二ノ宮くんって、本当はいい人なんだなって。
人をちゃんと認められる人なんだなって。
歩み寄ろうとしてくれている二ノ宮くんに、僕はどうすればいいのだろう。
嫌いじゃない。
けれど、苦手だ。
「将来会社を担う立場としても、人を認めないのはどうかと思うしな」
付け足したように発せらた言葉に
ちゃんと将来の事も考えてて、凄いな、って思う気持ちと反してどこかがチクリとした。
「そっか。……ありがとう」
僕の言葉に二ノ宮くんは微妙な顔になった。
「ありがとうって…変だな」
「え、何で?」
微妙な顔になったと思ったら、肩を震わせてくすくすと笑い始めた。
「変な奴」
「え、え、」
なんで僕は笑われているのだろうか。
でも、僕を笑う二ノ宮くんの顔は凄く優しくなってて。
それに合わせて僕もふふっと笑った。
「変な奴だけど、よろしくね?」
「、あぁ」
ここが、僕と二ノ宮くんのスタート地点。
まだまだ不十分なその関係だけど、一つ、心の蟠りが解けていく気がした。
「あーぁ、あの馬鹿委員長。
ちゃんと正直に言えばいいのに」
その様子を扉の向こうで桜月君がニヤニヤしながら聞きていたなんてことは、本人以外知る由もないこと。
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