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「貰う?」
言っている意味がよくわからないが、と、父さんはいった。
うん、僕もわからなかった。
「…言葉を変えましょう」
と、桜月君がフォローを入れた。
「会長…、鈴原遥さんは、俺たちで保護させてもらいます」
保護。
それはどういう意味だろうか。
ここから、出してくれるのだろうか。
父さんから、解放してくれるのだろうか。
「保護って、遥を?どうして?」
父さんも、母さんも意味がわからないとばかりに顔を見合わせる。
「おや、お心当たりありません?」
そうですね、と人差し指をピッと顎につけながら桜月は続ける。
「悪者から姫を救うヒーローになりたい、ということでしょうか」
今度は僕と母さん、父さん3人の目が点になる。
隣で先生がため息をついたことに、ますます首をかしげた。
「余計わかりにくいっつーの」
「それは残念です」
残念ですと言いながら、顔はそう思っているようには見えない。
というか、笑ってらっしゃる。
「虐待、って言えばわかるよな?」
もはや年上にも敬語を使わない俺様っぷりに感心した。
虐待。言われて気づいた。
あぁ僕は。
虐待、されてたのか。
されてる方は気づかないとはいうけれど。
僕じゃないか。
「虐待?なんの事だかわからんな」
「じゃああの痣はなんだ?」
僕は今回の件で、服を脱いで見せたわせじゃない。
という事は、先生が言う痣は、体育祭の時に見られたものだ、
「それはこの前、階段から落ちてだな…今治療中で安静なんだよ」
という父さんに、心の底から失望した。
「な訳ねぇだろ」
スッと僕の手から桜月君の携帯を抜き取り、その画面を父さんに見せた。
そこには僕がさっき書いた、「ずっと、殴られてました」という文章が残っているわけで。
「それ以外にも、あるけどな」
と勝ち誇ったように言った。
「遥」
久しぶり。
父さんが僕の名前を呼んだ。
けどそれは、子供に向ける父親の声ではなかった。
目が言ってる。
「覚えていろ」
と。
ガシリと。
それだけで首を絞められたように息がつまる。
「てなわけで、虐待してるわるーい親から会長を助け出したいと思います」
「させない、と言ったら?」
父さんの言葉に、わかってましたというような顔で、桜月はいった。
「強行突破、ですかね」
それはあまり好ましい展開ではないですけど、と。
「遥」
なんで、僕の名前を呼ぶの。
「こっちに来なさい」
あぁ、僕がこちら側に来れば彼らは何もできないと思ってるのだろうか。
「遥?」
心配そうに名前を呼ばれたけれど、母さんの声が全く心に響かないのは初めてだった。
行きたくない、という思いと、
行かなければ、という思いが交錯し合う。
「鈴原」
と、僕に向かって手を伸ばす先生。
「助けてやる」
お前を、ここから。と。
その言葉に、僕ははんば無意識に先生の手を取った。
「た、すけ、っ…て」
いつからだろう。
わからないけれど、泣きながらそう声に出した。
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