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事実と後悔
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「……、お前ら外出とけ」
ペラリと会長の服をめくったあと、低い声で先生が言った。
「なんで、ですか。俺も、会長の容態気になりますし」
「いいから、出とけ。いいって言うまで入ってくんな」
意味がわからない。
傷の手当に付き添っては、ダメなのか。
「直人、出るぞ」
そしてなんでこの人も従うのか。
「でもっ…」
「ちゃんと報告はするから。ほら行け」
しぶしぶというか、諦めて部屋を出た。
一方、部屋に残った保健医は難しい顔をしていた。暴力による傷なら、まだいい。
だが、問題は別だ。
「まさか、な…」
これは、痣のある身体に浮かぶ赤い斑点。
考えられることは、1つ。
「これじゃ、見せれねぇよなあ」
くしゃりと、穏やかに寝ている遥の髪を撫でる。
コイツは殴られたとしか言ってなかった。
けど、数年間そうされてきたのに、たった1週間でここまで怯えるようになるだろうか。
けど、この身体を見ればそれも納得だ。
「言えねぇよな、犯された、なんて」
保健医という仕事上、しかも男子校という環境の中、学園でそういう生徒は幾度となく見てきた。
みんなほとんど泣いていて、心に深い傷を負う。
そんな時に大切なのは、1人でも信用できる友達がいること。
遥の場合、1番心配なのは、その時1人だったことだ。
けど、吐かせてみないことにはどうにもならない。
「泣かせるかもな…」
泣かせるかもしれない。
思い出して、また傷を負うかもしれない。
けど、言わせなければならない。
アイツらを出て行かせたのは、念のため。
態度を変えるなんてことはないと思うが、本人が言いたくないのに勝手に覗くのは少ない方がいいと思ったからだ。
それでもちゃんと傷の手当はしておく。
「もっと早くに来るべきだったな…」
後悔しても、もう遅い。
頭ではわかっているけれど、思わずにはいられない。
「ごめんな」
謝っても、何にもならない。
謝っても、コイツは大丈夫ですと笑うだろう。
けど、笑うくらいなら泣いて欲しい。
辛いなら、辛いと言って欲しい。
呟いた謝罪の言葉は、静かな部屋に消えていった。
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