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眼が覚めると
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僕が起きたのは、二ノ宮家に連れてこられた次の日。
「ここ、どこ…」
道中寝ていた僕は見覚えのないここがどこだかわからなくて、少しだけパニックになった。
掠れる声で辺りを見回す。
そのまま動きを止めていると、奥の方からカタンっと小さな音が聞こえた。
誰…?
人がいるのにそれが誰かわからないというのは、結構怖い。
けれど、そんな心配はいらないと知る。
奥の部屋から出てきたのは、桜月君だった。
桜月君、と名前を呼ぼうと思ったけれど声が出ないからどうしようもない。
それに、携帯とかもないし…
必然的にじっと見るような形になって、チラリと僕の様子を見た彼と目が合った。
「…ん!?会長!?」
コクンと頷くと、すぐにベットによってきて、体の方は大丈夫ですかと聞いてきた。
そしてすぐ後、気づいたように「すみません、気づかずに」と言って携帯を貸してくれた。
『大丈夫だよ。えっと、ここどこ?』
と打てば、
「あぁ、先生と…委員長の実家ですよ」
つまり二ノ宮家ですね、と返ってきた。
『学園じゃないんだ?』
「あー、まぁ夏休みですからね。先生も休暇を込めてって感じで。
あ、呼んでくるんで、待っててもらえますか?」
頷くと、フッと笑って早足で部屋を出て行った。
それを見送って、ふとと気づく。
ひた、と腕のガーゼを触れる。
「手当、してある…」
それは純粋にありがたかった。
けど、けれど、それは同時に気づかれたことを指す。
「ど、しよ……」
なんて言われる?
気持ち悪がられる?
どんな目で見てくる?
不安がどんどん渦を巻いて大きくなっていく。
気遣われる方が、逆に辛い。
頭の中がぐるぐるして、もう一杯になりそうだった時。
ドアがノックされて桜月君と、先生が入ってきた。
僕の表情を見て、ほんの少しだけ顔を強張らせたのは先生。
だけ?
桜月君は、何も変わりない。
知らないの、だろうか。
「何やってる。早く来い」
先生は扉の向こう側に声をかけた。
僕からはちょうど死角になって見えないけれど、ちょっと経った後に姿を見せたのは二ノ宮君だった。
なぜ君がここにいるの?
そりゃあ二ノ宮君の家なのだからいてもおかしくないけれど。
また、僕を責めるの?
冷たい目で見てくるの?
「ぇ、………んで」
俯いたまま近寄ってくる二ノ宮君。
まさか、二ノ宮君にもバレてるのだろうか。
それは一番怖い。
わからないけど、すごく怖い。
「ま、とりあえず」
と、先生が口を開く。
「起きたてで悪いが、話してもらうぞ」
と。
あの家での1週間のことだろうか。
なら、十分とは言わずとも話したはずだ。
『言いました、よね?』
画面を見せると、鈴原、と先生は言う。
「まだあるだろ?」
「っ、!」
やっぱり、この人は知ってる。
僕が思ってた事を汲み取ったのか、優しい声でそう促す。
「大丈夫だから、ちゃんと話せ」
チラリと、二ノ宮君を見た。
まぁバチっと目が会うわけで。
「…」
二ノ宮君は、何も言わなかった。
けれどその目は心配しているような、困っているような目で。
僕は思わず目をそらした。
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