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とある委員長の追憶
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「ん…」
さら、と。
噴水で少し遊んだ後、芝生の真ん中で横になっていつの間にか寝てしまった遥の頭を隣に座っている二ノ宮が撫でた。
本当にこいつは、と思う。
「何でこんなに背負うかな」
と、ふっ、と目を閉じた。
中等部から会長をやっていた俺は、当然のように高等部でも会長になると思っていた。
けれど。
会長になったのは、名前も顔を見たことがないコイツで。
ひどくショックだったのを覚えている。
わかっている。
あれは、前会長のいたずら心で本人も思ってもみなかったことなど。
けれど、急に横取りされたような気分になって随分と冷たく当たってしまった。
そして、コイツの俺に怯えるような、気遣うような態度が余計に俺の気分を悪くせた。
なんでコイツが。
なんでこんなやつが。
そういう思いがジワジワと思い浮かび、コイツを見ていると居心地が悪かった。
けれどそれは最初までで。
途中から、
なんで俺にそんなに怯える。
なんで、俺には、、笑ってくれない。
と思うようになっていた。
自分が招いたことなのに。
食堂でも。
階段から落ちたのならば、軽症であってもどこか痛いはずなのに、容体も聞かずまた酷い言葉を言ってしまったことを悔いた。
屋上でも。
ひどく辛そうな顔をしていたのに、それに気づかないふりをして傷つけてしまった。
初めて怒鳴られた時。
目が覚めた。
それからどうすればいいかわからなくて直人に聞いたときは、自分の無知さを恥じた。
直人から、馬鹿ですかと言われた時は「あぁ本当だな」と思えるほど。
体育祭で。
殴られたと聞いたときは本当に心配した。
親のことを知った時、俺は何も知らなかったのだと、何も言ってくれなかったのだと、悔しかった。
それと同時に、自分がそうさせていたのだと、自分自身に怒りが湧いた。
謹慎で。
コイツの部屋から大原が出てきた時、驚いた。
いやまさか、そんなはずは。
心のどこかではわかっている。けれど、その問い不安定だった俺はしてはならないことをした。
直人からコイツがそんな事するのかと言われた時には、何も言えなかった。
コイツがここに来て。
ひどくやつれていて。
声が出ないと知って。
何をされたかを聞いて。
自分のやったことが、こいつを苦しませたのだと気付いた。
それなのにコイツは「大丈夫」ですなんて笑う。
そんな顔で笑われても信じられないというのに。
コイツの優しさに漬け込んで、また側にいたいなどと願う。
なんて、我儘な自分。
それを受け入れてくれたコイツは、なんてー。
コイツを引き取る話が出た時、本当はここにいて欲しかった。
けれど、それを俺が言える資格はない。
もう泣かせたくない。
もう苦しませたくない。
もう、辛いのに大丈夫なんて笑って欲しくない。
ふっと、目を開ける。
今度こそ、心からの笑顔で、俺に、
「笑ってほしい」
声が出なくても別にいい。
その気持ちくらい、考えてることくらいわかるようになってやる。
だから、
「笑って、くれよ…」
学園に戻っても、信じると、守ると、
もう2度と、同じ過ちはしない。
こんな後悔は、味わいたくない。
ここまでコイツを思う俺は、きっと。
抱き締めてやりたいと、そこで笑い泣けばいいと、思ってしまう俺は、きっとー。
「いいのか」
きっと、コイツのことがー。
「俺がお前を思っても、いいのか」
ずっと前から好きなのだろう。
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