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諭すように
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バタン!と、いきなり横の扉が開いた。
「会長!」
「っ、なんで…さくらづき、くん」
そこにいたのは息を切らした桜月君で。
あの時聞こえた声はやっぱり桜月君だったのかと、思った。
「え、会長……泣いてるんですか?」
「あっ、こ、これはちがっ」
僕の顔を見て目を見開く桜月君。
涙はもう止まったけれど、きっと目は赤い。
慌てて目元を隠すけれど、もう遅いだろう。
「委員長室から出てきましたよね。
何かあったんですか?委員長が、またなにか?」
あぁ、と僕の手を引いてソファへと座らせた。
「いや、二ノ宮君は、何もしてないよ」
何もしてない。
僕が勝手にこうなってるだけ。
「……、大原君って、綺麗なんだね」
僕のその言葉にピクリと桜月君が動いた。
「どうせ、金髪の碧眼でしょう?」
「あれ、知ってるの?」
「常識です(←俺にとっては)」
「そ、そうなんだ…」
「で、会長はどこでそれ見たんですか」
「あ、…………二ノ宮君のとこ、で」
「あー、何か言われたんですか?」
「いや、特には……」
なんで隠す。
隠さなくてもいいことなのに。
「あ、その、2人付き合うんだって」
「…、は?」
「凄いよね、両思いなんだよ。羨ましいなぁ」
はは、と笑うと桜月君はぐっと眉間にしわを寄せた。
「それ、誰が言ったんですか?」
「二ノ宮君だよ」
僕がそう言うと、はーと思い溜息を吐いた。
「さっきのは、そういうことか」
あーもーくそ、と桜月君は乱暴に髪をかきあげた。
「俺としたことが」
「桜月君?大丈夫?」
「はい。」
で、と紡ぐ。
「会長はなんで泣いてたんですか?」
「ぁ、……」
まさかそこを掘り返されるとは思ってなかった。
なんで、なんて僕が一番わからない。
「わかんないんだ」
ここがね、とぐっと胸を抑える。
「2人付き合うって聞いて、喜ばしいことなのに、痛いんだ。苦しくて、苦しくて、なんか、泣けてきちゃって」
「……」
「なんで、だろう」
「、会長」
「ねぇ、桜月君。なんでこんなに苦しいのかな?」
二ノ宮くんが嬉しいことは、1番に祝ってあげたいのに。
「笑っておめでとうなんて、いえないよ」
なんでかな。
なんでこんなに最低なこと思うのかな。
「付き合うって聞いて、苦しかったんですよね」
「うん」
「なら、簡単じゃないですか」
「簡単?」
どこが、簡単なの?
「それは、委員長と大原が付き合って欲しくないってことですよ」
「それ、は…」
つまり、と真剣で優しい顔を僕に向ける。
「会長が、委員長のこと、好きなんじゃないんですか?」
最初言ったことが、理解できなかった。
僕が、僕が
「二ノ宮君を、好き……?」
「少なくとも、俺にはそう見えますけどね」
考えたこともなかった。
僕が二ノ宮君を好きだなんて。
「それ、は…違うよ」
そうだ。
きっと二ノ宮君の優しさが僕に、僕だけに向けられているのだという勘違い。
無意識な願望。
それが他の人にも同じであることに気づいて、落胆した。
ただ、それだけ。
けれどそれが、好きなのだということに、まだ僕は気づいていない。
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