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踏み出そう
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二ノ宮君が好きだと自覚してしまって。
余計に二ノ宮君を見ることができなくなった。
それは、見たくないからというのもあり、恥ずかしいからというのもある。
会わないと言っても、風紀委員室に行くと必然的に鉢合わせするわけで。
その度に避けまくっている。
今日も、風紀委員室に来た。
「あの…桜月君いるかな」
まぁいつも、本人なんて呼べるわけもなく、桜月君を呼んでしまうんだけど。
「…、大原君、飲み物買いに行きましょう」
ちらりと僕を見た桜月君はなぜか大原君の腕を引いてつれて行こうとした。
「え、」
「なんだ直人、奢ってくれるのか!優しいな!」
そのまま手を引いて部屋を出てしまった。
つまり部屋には二ノ宮君と2人きりなわけで。
いや、置いていかないで欲しい……。
「何か用か」
また僕を見ず書類に目を落としたままそう聞く二ノ宮君。
「あ、いや…提出書類を…」
「双子に任せればいいだろう」
なんだかそれは、僕には来るなと言っているようで。
「会長の仕事だからね」
ねぇなんで。
なんで僕を見てくれないんですか。
そんな思いが溢れそうで焦る。
「じゃあ、僕もう行くよ」
早く戻りたい。
そう思ったけれど、桜月君の気遣いが頭に浮かんだ。
扉の前で、ひたと立ち止まる。
「あ、あの、」
僕の声で、二ノ宮君は動いていた手を止めた。
視線は相変わらず下だったけれど。
「僕、何かした?」
「何がだ」
「怒らせるようなこと、しちゃったかな」
「…」
そこで二ノ宮君はようやく顔を上げた。
逆に僕は俯いてしまって、それに気づかなかった。
「僕のこと、嫌いになっちゃった、かな」
桜月君は。
一歩も引かないでいいと言ってくれた。
二ノ宮君は僕を嫌ってないと言ってくれた。
少しだけ、勇気を振り絞ってみてもいいだろうか。
「……嫌いになってなんかいない」
絞り出すような声に、僕は顔を上げた。
つまり、二ノ宮君と目が合うわけで。
「っ、」
それだけで顔が赤くなってしまいそうで焦った。
「で、でもなんか怒って…」
「怒ってなんかない。俺は、俺は、…くそっ」
ダンッと、二ノ宮君は机を強く叩いた。
「ご、ごめん……っ」
その雰囲気が怖くて。
「もう、出て行け。俺に必要以上関わるな」
なんで。
なんでそんなことまで言われないといけないんですか。
出て行きたくなった。
実際もう二ノ宮君には背を向け扉を開けていた。
けれど。
これじゃダメなのだと。
ここで引いたら後悔すると。
手に力を入れ、扉を閉めた。
まだ、逃げてはいけない。
そうだよね、桜月君。
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