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引いてダメなら
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急いで保健室に行って。
桜月君と外で待たせられた後、僕の傷も手当してもらった。
その後、二ノ宮君を彼の寮の部屋へ連れて行き、寝せた。
「鈴原、お前も一旦帰って休め」
部屋を出るとき、先生はそういった。
そんなの、答えは決まってる。
「ここにいます」
「だが、」
「誰かいた方がいいでしょうし、言う通りにさせてあげましょう」
「はー、わかった。多分すぐ起きるぞ」
「会長」
先生が先に行き、桜月君が僕の隣に膝を落とす。
「少しは、強引になってもいいんじゃないですか?」
「…でも、僕のせいで…」
「それは、委員長が起きた時に本人に言ってください。
会長だって、男の子なんですから、振り向かせてやるくらいの気持ちでいいんですよ」
最初から両思いな人なんて、いないんですからと。
「……うん」
そして、もう一つ気になったことを言った。
「大原君は、どうなるの?」
「あー、家に送ります」
「家?」
「俺の家、警察やってますからね。
会長の両親を預かったのもうちです」
は、初耳だ。
「凄いんだね」
「そのせいでちょっと鍛えられましたけどね。
先ほどはお見苦しいところお見せして申し訳ありません」
と、桜月君は苦笑した。
けどそれに救われたのも事実だ。
「それじゃ、委員長をよろしくお願いします」
「あ、はい」
桜月君が出て行って、目を瞑っている二ノ宮君を見る。
言えば、よかった。
迷わず好きだと言えばよかった。
そっと、二ノ宮君の手を握る。
今言っても、聞こえない。
「二ノ宮君…」
桜月君が言った通り。
ちょっとだけ、押してみても、いいのだろうか。
「……好き」
呟いた声は小さかった。
「好き、好き、好きだよ…」
何度も、何度も呟く。
いつか、はっきりと言えるように。
「僕なんて守らなくていいから」
代わりになんてならないで。
「もっと、自分を大切にしてよ…」
好き、ともう一度呟いた。
「傷つくところなんて、見ていられない」
二ノ宮君の手を、両手で握って、額に押し付ける。
「それは」
ぐっ、と握られた手に、驚いて顔を上げた。
もちろんその声と、手は二ノ宮君のものであって。
「それは俺も同じだ」
鈴原、と名前を呼ばれる。
「無事でよかった」
笑ったその顔に、思わず泣きそうになった。
「にの、みやくん、…傷は…」
「こんなの、かすり傷だ。俺だって少しは鍛えてるぞ」
よかった、
「よかっ、た…!」
よかった。
困ったな、と二ノ宮君は言った。
「泣かせたいわけじゃないんだが…」
「あ、りがと、」
本当に困った様子で苦笑した二ノ宮君に、笑ってお礼を言った。
安心してくれたらと。
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