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飾らない君
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二ノ宮side
どうぞ、と真っ赤になりながらぎゅっと目を瞑る鈴原を見る。
……やばい、可愛い。
ゆっくりと、唇を合わせるとピクリとその肩が揺れた。
そのまま静止する。
息を止めていた鈴原は次第に苦しくなったのか、眉根を寄せて少し苦しそうだ。
その様子にクスリと笑いが漏れる。
「鈴原」
唇を離すと、ぷはっと息を吸い込んだ音が聞こえた。
「鈴原」
もう一度、名前を呼ぶ。
「な、なんでしょう?」
「鼻で息しろ」
鼻っ先をつつくと、えっ、やっぱりしてなかったのか、と驚いていた。
なるほど、無意識に止めていたのか。
髪をさらりと撫でる。
こうしてみると、
「女の子だな」
そう言うと、不安そうな声が返ってきた。
「女の子ほうがいい?」
またこいつは。
なんでそんなに比べるのか。
なんでもっと自信が持てないのか。
俺はお前を好きだと言っているのに。
「お前だからいいんだよ」
そう言った。
「僕、だから…」
「あぁ」
鈴原、と名前を呼ぶ。
それでも俯いたままの鈴原を、もう一度呼ぶ。
「鈴原こっち向け」
不思議そうな、不安そうな顔をしている鈴原は、俺の顔をまっすぐ見る。
鈴原の身長は高いとは言えない。
俺との差も結構ある。
けれど、まっすぐに目を見てくれるのは嬉しい。
大原のような上目遣いとか使わない、そんな飾りっ気のないこいつが好きなんだ。
「なにがそんなに不安なんだ?」
文化祭前から気になっていた。
なぜそんなに遠慮しているのか。
「えっと、何がって?」
「避けてただろ、俺のこと」
あ、と小さく声を上げる鈴原。
「ちゃんと言え」
こいつはこうでも言わないと話さないから。
「ん、この前、二ノ宮君が告白されてるところ聞いちゃって…」
「ん」
「か、可愛い子だったから、なんか僕なんかでいいのかなって思っちゃって」
……直人の言う通りじゃないか。
すげぇなアイツ。
「で?」
先を促す。
「んと、僕その、幸せだったんだけど。
そのせいで悲しむ人もいるんだって思ったらなんだかモヤモヤして」
「で、避けてた?」
「避けてたわけじゃないけど…。
ごめんなさい」
しゅんと頭を垂れる鈴原を抱き寄せる。
「お前は優しいな」
「え、いや、それは…」
「お前は俺のどんなところが好き?」
「えっと、…ど、どんなところ…」
全部です、と小さく声が聞こえた。
「そうだな、お前は、優しいし、強いし、ドジだけどちゃんとやることはやるし、自分のことは後まわしで他人ばっかり心配する。
あげればきりないな」
まだまだ言える。
けど、俺だけが知っていればいいこと。
「つまり言うところの、俺もお前の全部が好きなんだよ」
そう言うと、真っ赤になってる耳が見えた。
やっべ、噛みてぇ。
「僕で、いいの?」
「お前がいいんだよ」
そう言うと、鈴原はうん、と小さく笑った。
本当、こいつの笑顔は綺麗だと思う。
「ここじゃあれだ、部屋に行こう」
今日はずっと話していたい。
「僕が二ノ宮君のとこ、いくよ」
いつも来てもらったら悪いから、と。
「あんまり遅かったら迎えに行くぞ」
冗談半分でそういった。
「着替えたらすぐ行くよ」
それに鈴原も笑って答える。
正直、着替えなくてもいいと思ったがこれは譲ってくれなさそうだと思う。
時折、譲らないところあるからな。
そういうところは男の子で、男前だと思う。
「待ってる」
「うん」
そう頷くお前は俺の中の気持ちなんて気づいていないのだろう。
抱きしめるだけじゃ、足りないこの気持ちを。
もっと俺でいっぱいにしたいって気持ちを。
逆に、気づかないでいてほしい。
けれど、まさか本当に迎えに行かなければならないとは思っていなかった。
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