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今日の話
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αはβに秘密の女装癖がある
「シャットってさ…一体何をしてる子なんだろう」
「何だよ突然」
アローはソファーに腰掛けコーヒー片手に天井を仰いだ。
「一応、ミストを誘拐したわけだし犯罪ではあるじゃん?なんか見逃しちゃってるけど気にならない?」
「気にならないと言えば嘘になるな…」
ジェレミアは読んでいた新聞から目を離してアローに倣って天井を仰いだ。
「じゃあ、テンゼロに聞いてみない?知ってるかも」
「知ってるのかぁ?昨日の今日だぞ、話になんてなってないんじゃないか?」
「昨日の今日だから話になるんじゃない?とりあえず電話してみよーっと」
そう言ってアローはジェレミアの返事を待たずテンゼロに電話を掛け始める。2コール程でテンゼロは電話に出た。
「え?シャットの仕事?うーん言ってもいいのかなぁ?」
少し考えてしかし教えたところで二人にはどうにもできないだろう。えーい、言ってしまえ後は成るようになる。
「アローはロッソオクルスファミリーって知ってる?」
『ロッソ…何?君たちの家族のことかな?』
「あー…ん、普通はそういう反応するよな。ロッソオクルスってのはこの辺一体を縄張りにしてるマフィアのファミリー名なんだ」
『マフィア!?シャットってマフィアの一員なの?』
「一員ってか…頭取、だから”ボス”だな」
アローに返事はない。まぁ、信じられないとは思う。マフィアなんて普通に暮らしてたら存在なんて知るはずない。
「シャットの…うちはロッソオクルスを作った本家だしボスになるのは…自然かな。俺は家を飛び出しちゃったし後継者には関係ないけど、ロッソオクルスはこの辺をシマにしてるから俺たち”野良犬”も気にしないわけにはいかないんだ」
『ってことは、お前はシャットに会う前からずっとシャットのことは知ってたってことか?』
ジェレミアの声がする。スピーカーにしているようだ。
「ああ、知ってたよ。自分だけ知ってるってのは心苦しかったけどな」
苦笑する。シャットは死に物狂いで俺を探していたというのに。
『それじゃあ…誘拐したこととか警察に言ったらどうなる?』
「どうにもならないだろうな。警察はマフィアと癒着してる。他の公的機関も政府すら何らかの関わりは持ってるし、今確実に癒着してないって言えるのは"軍"くらいなもんかな。あそこは幕僚長が代わってからマフィアとは完全に関係を断った。…仮にアローたちが通報してもうやむやにされるだけ…それよりあまり関わらない方が賢明だ」
『そっ…そっか、肝に命じておくよ』
俺は家を出てマスターのところに流れ着いてから、マスターが情報屋ってこともあったしシャットのことはよく耳にしていた。というかロッソオクルスのシマ、つまり縄張りで俺たちは”無許可”で仕事をしているから彼らの領域に入らないようにしかしシマに張り巡らされた彼らの”秩序”に反しないように従順に生きることを強いられる。だから、彼らの動向には細心の注意を払わなければならない。故にマフィアの情報は常に最新のものでなければならないのだ。ああ、”無許可”っていうのはマフィアに属していないってこと。マフィアのお抱えになれば当然、公然と仕事ができるがその分自分の好きに仕事は選べなくなるし、無理難題も押し付けられる。失敗なんてしようものなら即刻首を切られるだろう。次の日には跡形もなくこの世からおさらばなんてことになってしまうのだ。俺は、俺たちはそんな”飼い犬”同然のことは承服できなくて今も”野良犬”をしている。昔はよく”飼い犬”にならないかと声を掛けられていたらしいが、その度マスターは『1.0は透明人間だから誰にも捕まえられない』と言って断っていたらしい。以来1.0はマフィアに目を付けられていて、見つかったら何をされるかわからない状態だ。けど自称超一流の情報屋で唯一無二の相棒・マスターはマフィアから悉く1.0の姿を隠してきた。マスターの奔走によって俺は今日までマフィアに顔バレしたことはない(一番バレちゃいけないボスのシャットにバレたけどシャットも言うつもりはないらしい)。マスターが上手く隠してくれているので俺は恙無く仕事を行えている。”目”の能力も俺の名声には一役買っていてお陰で今では”最強で最高の殺し屋”とまで言われるようになった。…まぁ、どうしてそんな風に言われるまでになったかは何れ話すとして俺は今仕事の最中なのでそろそろ通話は切らせてもらおう。
「じゃあ、しますか。掃除!」
シャットの部屋に来てまず思ったのは掃除しなきゃである。汚部屋というわけではないのだけど、なんかこう…物があるんだよな。机の上に読みかけの本がバラバラ置いてあるとか、ソファーにスーツのジャケットが掛かってるとか、洗い物が残ってるとか、ゴミ箱が一杯とか…なんか気になる。ので、シャットが仕事に出掛けたのを見送って気合いを入れて俺は掃除を始めたのだった。そして今俺はシャットの部屋の前にやって来ている。初めて入る訳じゃないけど、やっぱり緊張するよな。何せシャットはまだまだ多感な時期だし盛んなところもあるはずだから。だから、ベッドの下という聖域からお宝が出てきちゃうかもしれないだろ?よくあるじゃん、母親が息子の部屋掃除してたらちょっとえっちな本が発見されちゃうって話。
「大丈夫、俺はどんなものが出てきても平気だから…」
しかしだからと言って掃除しないわけにはいかない。部屋に入ったときここが一番散らかってたから。意を決して俺は扉を開いた。
「お邪魔しまーす…」
やっぱり寝室は物が散乱していて思わず頭を押さえた。駄目だ~俺こういうの堪えられない。ということでまず落ちている物をしまおう。
「ジャケットをこんなところに捨てておくなよ皺になる…こんなに良いものなのに」
カーペットの上に投げ捨てられているジャケットを埃を払いつつクローゼットに戻す。少し歩けばネクタイが何本も捨てられていて全て拾い集める。
「なんかのファイル…?」
テーブルの上にファイルが無造作に置かれている。中を見てみれば誓約書と書かれた紙が大量に留められていた。何のとは言わないがとにかく危ない物だということは言っておこう。マスターが見たら喉から手が出るほど欲しがるであろうマフィアの内部事情が書かれた書類だ。そんな類いの物が不用心に広げられていて、お前それでもボスか…と言いたい。そんな感じで色々捨てられている物をしまうと今度はテーブルやクローゼット、チェスト、窓を拭いて掃除機をかける。
「いよいよ…ここに来たか」
ごくりと唾を飲み込む。ベッドの下、それは思春期の少年たちが最も見られたくない聖域である。
「なんか箱があるな…」
恐る恐るその段ボール箱を引っ張り出すと大量の本…ではなく、手紙が出てきた。
「シャットが書いてたやつここにもあったのか…」
部屋に来た日も何通か読ませてもらったが夜遅かったこともあって早々に切り上げてしまっていた。一通拾って中を開いてみる。
「ふんふん…シャットも楽しいことはあったんだな」
子犬を飼い始めたという内容だった。ボールを投げると尻尾をブンブン振って拾ってくるらしい。最後に兄さんにもボールを投げてほしいと書かれていた。
「これは…怒られたのか」
家庭教師が作ったテストの結果が良くなかったようだ。こっぴどく叱られたからあの家庭教師にはもう会いたくない、と少し滲んだ文字から泣きながら書いたのだとわかる。最後に兄さんと一緒なら勉強も頑張れるのにと書かれていた。
「"父様"か…仲悪くなっちゃったみたいだな」
"父様"とは毎日喧嘩になるらしい。俺がいなくなったことで"父様"は機嫌が良くなったがシャットはそれが気に食わなくていつも下らないことで喧嘩をしていたようだ。俺のことで大喧嘩になったこともあると書かれている。兄さんに会いたいで手紙は締め括られていた。
読み進めていくとどの手紙にも共通して"兄さん"と書かれている。俺に宛てて書いているのだから当然なのだけれど、それは手紙の最初に書かれた日付を追う毎に頻繁に使われるようになっている。最近に至っては兄さんに会いたいとしか書かれていないものもあった。
「…寂しい思いさせてたのか」
手紙は全て"兄さんに会いたい"という一文に集約されている。全部を読んだわけではないが他の手紙もそういう内容なんだろう。罪悪感で胸が締め付けられる。
「番を見つけた…?それはめでたいな」
寂しいとは綴ってあるものの幸せなこともあったようだ。それは良かった。後で紹介してもらわなきゃな。と思ったら、
「番を殺した!?…これは尋問しなければ」
思わず二度見してしまった。殺したって、シャットお前…弁明できないならお説教だぞ。覚悟しとけよシャット、兄さんは怒ると怖いんだぞ。ブツブツ呟きながら壁に掛けられた時計を見て目を見開いた。
「って、もうこんな時間か!?マズイ、シャットが帰ってくる!」
外はもう日が傾いていて部屋の中は薄暗くなっている。しかし"目"を持っているせいで暗闇でも昼間のように見えているので意識しないと昼夜を忘れてしまう。常に意識していないといけないのは欠点だ。というか早く掃除終わらせないと手紙に夢中になっててなんて言い訳にはならない、中途半端は落ち着かないからな。
「ベッドの下も掃除機かけてって…こんなところにもベストが落ちてるし…全く」
クローゼットにしまおうとするがもう入りそうにない。仕方ないからあそこのクローゼットにしまうか。
それは部屋の一番奥の片隅に鎮座した、不自然に孤立したクローゼット。何となく近付き難いそこは今の今まで避けていたのだけど、服が入らないなら仕方ないそこにしまうまでだ。
「さぁてこれをしまったら掃除機、を…」
ピシリと音を立てて俺は固まった。
見つけてしまった。
シャットのお宝を。
「こ、これ…女物だよな?メイド服とかナース服とか…バニーガールもある…」
クローゼットの中には色とりどりの衣装が詰め込まれていた。それもこれも皆、女物だ。しかもコスプレと呼ばれそうな類いのものばかり。まさか、シャットにそんな趣味があっただなんて。
「いや、でも…俺は平気だぞ…どんな趣味でも可愛い弟の趣味なんだから…受け入れなきゃ…」
自分に言い聞かせるように平気だと反芻する。
「それ、見ちゃったんだ」
「でも言わなきゃ大丈…」
振り返るとシャットが俺のすぐ後ろに立ってネクタイを緩めていた。革手袋を外した左手には俺が撃った傷があって包帯が巻かれている。痛々しいそれを見てすぐにシャットが帰ってきたのだと思った。全身が跳ねる。
「しゃしゃシャット!!これは!その…!」
「別に見られても兄さんなら平気だよ」
「あ!俺はこういうのもアリだと思うぞ?だから、全然、これっぽっちも変だなんて思ってないから!な!」
「…兄さんは変だって思わないんだね?」
「もちろんだとも!可愛い弟の趣味を変だなんて言うわけないだろ!?」
身ぶり手振りで取り繕うとシャットは安心したように笑った。ベストを脱ぎながらよかった、と呟く。
「兄さんに否定されたら俺どうしようかと思ってたんだ」
「否定なんてそんな…」
「なら堂々としてもいいよね?」
「当たり前だろ!俺はいい趣味だと思うぞ!」
若干声が上擦っていた気がするけど嘘じゃないし寧ろ弟の新しい一面を知れて兄さんは嬉しい。
「それじゃあ、早速…」
「へ?今、着てみる感じ?」
「うん、今すぐ」
「あー…あー…いいよ平気!遠慮すんなってほらどれ着るんだ?」
「そうだな…初めは王道にメイド服かな」
「おーメイド服な、いいんじゃないか?」
「兄さんがいいって言うならこれにしようか。…はい兄さん、着てみて?」
「うん、わかった……………………………………………え?着てみて?」
メイド服を差し出しながら首を傾げるシャットの期待に満ちた目と目が合う。
「大丈夫、兄さんなら絶対似合うから!」
シャットはそれはそれはいい笑顔で俺の服を剥いだ。
「まってシャット…これマズくない?ヤバくない?放送できるこれぇ??」
「何を心配してるの兄さん?凄く似合ってる…本物の女みたいだ可愛いよ兄さん!」
俺は今、あろうことか俺が、メイド服を着ている。おっさんに片足突っ込んだ俺がメイド服。ヤバい…ヤバいって絶対!気持ち悪いよ?これ!脚めっちゃスースーするし胸元開きすぎだし何よりめちゃくちゃ恥ずかしい!!え、何これ何の罰?何の罪で裁かれてんの俺!?あ、殺人か!そうだった俺人殺しだわ…って今はそんな話してる場合じゃない!
「シャット…これ、ほんとヤバいよ!お前だって気持ち悪いだろ!?兄が女装って面白くないだろ!?自分でする方がいいだろ!?」
「?何で俺が女装するの?」
「え!?逆に聞くけど女装しないの?」
「まさか!俺がするわけないだろ?あり得ない」
「俺だってあり得ないわ!じゃあ、この大量の女物の服は何!?」
「何って…女装用だけど…」
「話通じねー!誰が女装する用なの?自分じゃないの!?」
「俺は女装しないよ。これは女装"させる"用だから」
「女装させる用?え…これ、」
シャットは満面の笑みを浮かべながら俺に死刑宣告をした。
「俺は言ってみれば"女装させる癖"なんだ。これは全部、兄さんに似合うと思って用意させたんだよ」
頭の中が真っ白になる。何も考えられない。全身の力が抜けてしまってへにゃへにゃと床に沈んだ。指一本動かせる気がしない。
「…それにしても、やっぱり思った通りだったなぁ。兄さん、凄く可愛い」
シャットはうっとりとした声で俺を褒めるが俺には全く響かない。褒められてこんなに嬉しくないことがこの世にあるとは。
「小さい頃の兄さんを思い出す度に思ってたんだ、兄さんには絶対女物の服が似合うって。だって小さい頃の兄さんは色が白くて、小さくて、柔らかくて、いい匂いがして、いつもにこにこ笑ってて。本当に可愛らしくて綺麗で、ずっと抱き締めていたかった」
脱力した俺をシャットは屈んで抱き締める。まるで壊れ物でも扱うかのように優しく包まれた。昔は俺の方がこうして抱き締めていたのに今では立場が逆転して俺がすっぽりとシャットの腕の中に収まってしまうほど体格差ができてしまった。
「でも兄さんだって成長するし抱き締めるのは諦めかけてた、…でも兄さんは今も昔と同じように小さくて可愛くてふわふわしてた。なら、絶対に着せてあげなきゃって思ったんだ」
俺の肩に顔を埋めてシャットは満足そうに息を吐いた。
「俺、今凄く幸せだよ。兄さんが俺の腕の中にいるってことが。しかも女装してくれてる」
顔をあげ頬が緩むのを抑えられないらしいシャットは熱いため息を吐き俺を離そうとしない。
「あのさ、シャット…そのぉ言いにくいんだけど……そろそろ離して…」
「はぁ…、なんかムラムラしてきた」
「は?」
なんか今聞き捨てならないことを聞いちゃった気がしたんだけど。
「そ、空耳かもしれないのでもう一回、お願いできますかね、シャットさん?」
「ムラムラしてきた」
「訂正する機会を与えてやったというのにお前は!離せ!!」
世迷い言を抜かすシャットから離れようともがくがこいつ存外に腕力がある。片手を負傷してるとは思えない力の入りようだ。自由な脚でバタバタと暴れるが体重を掛けられ押し倒される形になってしまう。
「んぎゃー!!まてまてシャット、お前自分が何言ってるかわかってる!?」
「兄さんとセックスしたい」
「いや”ーーーー!!!!離せ!!お前可笑しいよ!?疲れてるんじゃないの!?兄弟だよ?俺たち兄弟!!ここで設定ぶち込むと俺ら腹違いだからね!?正真正銘の兄弟だから!!実の兄とセックスとかないから!!!!」
「華麗なメタ発言ありがとう兄さん。でも、俺そういうの気にしないから」
「俺は気にするーー!!!助けて!シャット今離してくれたらこれまでのこと全部なかったことにしてやるから離してくれ頼む!!まだ戻れる!!!」
「無理…最近ご無沙汰で溜まってるんだ、兄さん手伝って?」
「可愛く言うな!一瞬許しそうになったわ…って触るな!脚を触るなぁ!!」
スカートの中をまさぐられて全身が粟立つの感じる。あり得ないって、兄弟なのに!何考えてるんだこの弟は!!
シャットを押し返しながら抵抗しているとシャットの動きが突然止まる。何となく礼儀かと思って俺も止まってしまう。危機的状況なことには変わりないのに。停止してしまったシャットの顔から表情がなくなる。
「兄さんは、俺を否定するの?否定なんかしないって言ったのに。嘘ついたの俺に」
「い、いやお前の趣味は否定しないよ?けど、それとこれは話が違うだろ?」
「俺は女装させてセックスするのが趣味なのに?番だったやつともいつもこうしてた。俺、相手が女装してないと反応しないんだよね。そんな俺を兄さんは否定するの?」
「へ?え…いや、それも否定しないけど…あれなんか俺が悪いみたいな話になってない?」
「兄さんの嘘つき…やっぱり女装癖な俺のこと、気持ち悪いって思ってるんだ!」
「そ、そんなことは、ないって…!お、おい…シャット泣くなよ!?何で泣くの?え!?まって?」
無表情の次は真っ赤な瞳からポロポロと大粒の涙を溢して泣き始めるシャットに理解が追い付かなくて俺はオロオロしてしまう。え?俺がいけないの?俺間違ってるかなぁ????
しかし考えている暇はない。とりあえず泣き止ませないといけないので袖で涙を拭いてやる。
「…やっと、兄さんに会えたのに…。ずっと憧れていた兄さんに会えて、俺、凄く嬉しかったのに…もし兄さんが死んでしまっていたらって想像したら怖くて夜も眠れなかった。だから兄さんに会えたとき本当に安心した…また楽しかったあの頃みたいに遊べるんだって思ってたのに、兄さんは俺を拒否するんだ…!」
「そんなことないって!!拒否するなんて…俺がそんなことするわけないじゃん…俺はお前のこと大切だよ?お前が大切だから、あのとき家を出たんだから!…お前から逃げるようなこともうしないから、泣かないでくれよシャット…綺麗な顔が台無しだ…」
「兄さん…」
「な?シャット、もう泣くな!」
シャットの頭をこれでもかと撫で回してやる。一頻りシャットは黙って撫でられていてやっと涙も引っ込んだようだ。よかった…。
「じゃあ、兄さんは俺を拒否したりしないんだね?」
「当たり前だろ!可愛い弟のことを拒否したりしないぞ、俺は!」
「なら、俺とセックスしてくれるよね」
「おう、もちろ…あ、まって、今の誘導尋問だろ、わぁあああ騙されたーーー!!!!!」
「尋問は俺の専売特許だから。了承したんだから男に、いや兄に二言はないよね?兄さん?」
シャットがのし掛かってくる。腰辺りに固いモノが当たってるなんて信じたくない。
「ベッドに行こうか兄さん、大丈夫俺、うまいから」
「ぜんぜんだいじょーぶじゃない!!!」
ひょいと軽々抱え上げられて、いよいよ俺に逃げ場はなくなってしまった。シャットによってベッドに縫い付けられて顔が近付いてきてもう俺はパニック。冷静ではない俺にはこの場から逃げる方法が思い浮かばない。
「しゃ…っむぐ!」
口に、唇になんか当たってる。これシャットの唇ですよね!?そうじゃないって誰か言ってくれ!俺たちしかいないけど!
「んん…ふ、ぁ…は…ん」
まって、シャット、うまくない?え?慣れてる感じですか?あ、ですよね!番もいたんだし場数は踏んでそうだよね!
口腔をシャットの生暖かい舌が縦横無尽に動き回る。逃げるように舌を引っ込めても絡め取られて吸い上げられる。時折角度を変え、その合間に自分のモノとは思えない甘ったるい声が漏れてしまう。飲み込みきれない混ざりあった唾液が頬を伝った。
「ん…ん!?むぐ、んー!」
ちょっと!スカートの中に手を入れるなって!
怪しい動きをするシャットの手を掴まえるがシャットは構わず俺の脚を撫で続け段々とそれは上に登っていく。マズイと思って掴んでいる手首に爪を立てる。離せと、シャットの目を睨み付けると目が細められた。嫌だという意味が込められているのだろうことは聞くまでもない。
「んぐっ…ん!むうう、んぁ!」
漸く口を離されたかと思ったら下着の上から自分のモノを握られる。ビリッと背中を電気が走る感覚に一瞬目の前が眩んだ。
「んー…やっぱり下着も女物にしないとパッとしないなぁ…兄さん次はちゃんと履いてもらうからね」
「次は、ありません!シャット離しなさい!」
「兄さん本気で怒ってる?怖くないんだけど。怖いって自分で言ってたよね」
「何言ってるんだ俺は怖いぞ!怒ったら怖いんだからな!……って何でお前俺が怒ると怖いってこと知ってんだ…」
「”視た”だけだよ兄さん。俺は”視た”だけ」
「みたって…あ、お前の能力って…ひゃん!」
答えを遮られる。モノを揉まれてギクリとする。反応が気に入ったのかシャットは三日月型の笑みを浮かべ俺のモノを柔く揉み拉く。だからお前、うまいんだって…あ、それ最初に言ってたか…。
「んぁ…シャット、あ、駄目だって…離して…!」
「ふふ…兄さんの声可愛い。元々そんなに声が低くないから女みたいだよ」
「だ、そういうこと…言うなっっ!ひっく…ふぅ、う…」
「可愛い兄さんのためにもっと気持ちよくしてあげるから」
そう言うとシャットはまさぐっていた手を止め体を起こした。そしてスカートの中に顔を突っ込む。俺からはシャットが一体何をしようとしているのかわからない。でもこれはヤバイやつだ。直感的に恐怖を覚えた俺は逃げようとするが下着がずり落とされ中心にヌルっとした感触があって悲鳴をあげた。
「は、まっ…シャット!お前!んひっ…ふわぁ、はぁん…シャッ、ト…口離して…」
脳に直撃する快感に体が震える。シャットの行動が自分から見えないせいか神経がシャットに集中してしまうらしい。上半身を起こしてシャットの頭と思われる膨らみを押さえるが止まる気配が見えず身体を丸めて耐えるしかない。
「あー…んっく…ひ…ぁあ、シャット!やめて、あっんん」
認めたくないけどシャットはテクニシャンだ。これが俺にじゃなくて外に向いてくれれば相手はイチコロだろうに、何でよりによって俺?あぁ、マジでヤバイ。
「ぁ…うんん…ふ、ぅう…はっ…シャット、はな…せ…!あ、あぅ…やばっマジで…!離せって!」
ゾクゾクと込み上げてくる寒気にも似た熱に限界が近いのだと知る。弟にイかされるなんて兄の威厳が地に落ちてしまう。それだけは回避しなくては。というか弟に過ちを犯させるわけにはいかない。ここは少し痛い目を見てもらってでも止める。
「この…!!」
俺は拳を握り渾身の力を込めて降り下ろす。鈍い音がしてシャットは案の定頭をスカートから出した。頭頂部を押さえている。若干涙目だ。
「いたっ…!兄さん何するんだよ!」
「こっちこそ何するんだ!ふざけるなよ!」
シャットは不服そうに俺を睨んだ。その睨み方はさすがと言うべきか迫力がある。一般人なら裸足で逃げ出すような殺傷能力を持った視線だ。しかしそんなことでは俺は引かない。伊達に長く裏社会で暮らしているわけではない。
「実の兄に欲情するなんてお前どうしちゃったんだよ!?異常なことくらいわかるだろ!」
「異常なことはわかってるさ。けど、兄に欲情することは何の法も破ってない」
「お前が法律を口にするな!…確かにそうかもだけど倫理観とか常識あるだろ!?」
「マフィアに倫理観も常識もないよ」
「法律は破ってないとか言いながらよく言えたなそれ!?~~~っとにかく駄目なもんは駄目だから!解散!!」
何とか未遂、未遂?で済んだからこれでよしとしてやろう。くぅ…俺ってほんと年下に甘い…。俺が年下に甘いのって十中八九シャットのせいだよな。これを機に改善しないとならないな、うん!
とりあえずずり落ろされた下着を履こうとシャットに背を向け立ち上がると、勢いよく引き戻される。予想していなかった衝撃にボスッとベッドに尻餅をつく。それから背後から腕が伸びてきて抱きすくめられた。
「え…シャット?」
「いいねそういうの」
ゾクリと背筋が凍るのを感じて後ろを振り返ると瞳孔の開ききったシャットと目が合った。あれ、なんか雰囲気がちが…。
ドサッ。
前のめりにベッドに沈むとシャットが俺に覆い被さってくる。そして耳元で鼓膜を震わせる妙に色っぽい低音が囁かれた。
「俺、そういうの凄く興奮する。…やめた。優しくするのはやっぱり性に合わない。セックスするなら、力づくじゃないと」
「はっ?んあ"っ!」
尻に激痛が走った。一瞬意識が飛びかけるが突き上げられて意識は強制的に引き戻された。尻に凶悪な太いものが捩じ込まれている。ナカをつんざく激痛に全身から嫌な汗がぶわりと溢れてくる。息ができない。
「おま、…いき、な、り"!」
なんとか振り向くがシャットの表情は窺い知れない。ただ、興奮したような荒い鼻息が聞こえてくるからこの状況を楽しんでることは伝わってきた。
「はぁ…にい、さんのナカ狭いね…食い千切られそう」
「だったら…抜けよ!バカっ!…あ”あ”!」
「兄さん、泣いてる?」
そう言われて初めて自分が大粒の涙を溢していることに気が付いた。しかし出て当然だ。だって慣らしもせずにいきなりナニを突っ込まれて痛くないわけがない。外的な痛みには慣れてるけど、この独特の中を引き裂かれ内蔵をぐちゃぐちゃと混ぜられるような内側から込み上げてくる痛みはどうしても慣れない。初めてではないにしろ何の準備もなしなんて俺にはハード過ぎだ。
「いだ…!いってぇ!あ”…んぎ…くるし、い!」
雰囲気とか可愛い喘ぎ声とかあるわけない。これは最早拷問であってセックスなどではない。これでもかという低い唸り声のような悲鳴をあげるがシャットには通じていないらしくすぐ気持ちよくなるからなんて悠長にイイトコロを探している。俺は暴れたくてもシャットに身体全体で押さえ付けられてしまっていて身動ぐことさえ許されない状況だ。シーツを握り締めて逃れようのない痛みに悶絶する。
「あ”ぁ…!いた…い!シャット、ぬけって!!ほんと、どうし、たんだ、よ!!」
突かれる度に息が詰まってまともに言葉も発せない。ナカは恐らく切れてしまっているのだろう、ぬるぬるとした感触がシャットのモノを動きやすくしてしまっている。
「どうもしてないよ兄さん?ただ女装した兄さんがエロ可愛いからかなちょっと興奮してる。…大丈夫、すぐよくなるから…もう少しだけ待っててね」
「そん、な…かはっ…ぬけ…よ!いてぇ!はっあ"……んひゃあ!」
「…ここか兄さんのイイトコロ」
「あっまっ…て!ん…ぐぅ…!は、あ"ぁ…ひっ…んん!」
イイトコロを見つけたシャットが嬉しそうに腰を擦り付けてくる。相変わらず俺は激痛に泣いていたがそれと同じくらい強烈な快感が背骨を駆け上がって脳天を貫いた。
「んく!あ…あひ、あ"、はぁ…あ"っ…ん…ひっ…ふにゃっ」
どんな反応をしていいのかわからなくて押し寄せる激痛と快感に身を任せることしか俺にはできない。嘸や今の俺は情けない格好をしていることだろう。
「なにその声…可愛すぎかよ」
「ふわぁ!?ちょ…まって!んあ、ぁあ"!ひ、ぎ…!」
よくわからないが何かお気に召したのかシャットが怪しく笑いながら俺を抱きすくめた。そんなことされては俺はもう動くことなんてできなくてシャットにされるがままになってしまう。いや、さっきからずっとそうだったけど、シャットと名前を呼んで制するが止まるどころかその律動は激しくなるばかりで俺の手には負えなくなっている。揺さぶられる度に目の前が真っ白になり、シャットとベッドに挟まれて肺が押し潰されまともに呼吸ができない。
「シャッ…と…は、あぁ…っく…ぬい…て、い"…ぃ…」
意識が混濁してくる。身体が思うように反応しなくなって痛みも快感も遠くに感じる。もう息を吸っているのか吐いてるのかすらわからない。
「シャ…………、、……」
「兄さん?」
シャットの声が微かに聴こえたのを最後に俺の意識は暗闇に沈んでいった。
「兄さん」
兄さんからの返事はない。
「兄さん、どうしたの?」
兄さんはピクリともしない。
「……気絶してる」
シーツを握り締めたまま兄さんは気を失っていた。身体を起こしてスカートを捲り結合部を見てみるとそこは真っ赤に染まっている。
「さすがに慣らさないのはまずかったか」
太股に指を這わせて血を拭う。指先に付いた血は勿体ないので舐める。血は生暖かくて決して美味くない鉄の味が口内に広がったがそれが兄さんの血の味なのかと思ったら興奮した。それから頬を掻いてため息をつく。まだ俺出してないのに。
「兄さん起きて」
兄さんを軽く揺すってみるが兄さんの瞼は固く閉じられていて俺の大好きな透明な赤色の瞳は姿を隠してしまっている。目元は腫れ涙の筋が頬を伝っていて自分が泣かせたのかと思ったら鳥肌が立った。
「兄さんの項、真っ白だ」
視線はαとしての性か自然と項に向く。兄さんがここまで白いのは先天性の病気によるものらしい。月明かりに照らされて青白い肌は人成らざるもののようで不気味でありながら、しかし誰も足を踏み入れていない新雪のように綺麗であった。そのとき衝動的に兄さんの項に噛みつきたいと思った。誰も入っていないならば俺がその雪を踏み荒らしたい。そんな子供染みた衝動に駆られて兄さんの項を一噛みしてみる。犬歯が食い込む肉は柔らかく、できることなら食いちぎってしまいたいくらい歯に馴染んだ。痛みからか兄さんが小さく唸ったが起きる気配はない。口を離せば項にはうっすらと赤い噛み痕ができていて唾液でてらてらと怪しく光っていた。
背筋がゾクリと冷える。それから内側から熱い何かが沸き上がってきて心臓がバクバクと脈打つ。それは自身のモノも同じで萎みかけていた欲がむくむくと膨れてきて呼吸をするのが辛い。額から汗が一粒、兄さんの項に落ちた。瞬間、頭がくらりとするような甘い匂いを感じる。Ωの発するフェロモンの臭いかと思ったが全く異なる部類のものだった。これは兄さんがいつも纏っている、洗剤かシャンプーか何かの匂いだ。普段なら安心する匂いなのに今はどうしてこんなにも甘美な匂いに感じるのか。ふわふわの髪の毛に鼻を突っ込んで肺一杯に息を吸う。俺の使っているシャンプーと兄さん自身の匂いが絶妙に混じって鼻腔を擽り肺を潤す。スカートの中をまさぐって女ほど柔らかくはないが程よい弾力のある尻を味わうように揉むと、α個体としての本能が全身を支配していく。発情期のΩのフェロモンを嗅いだときの抗いようのない生殖本能が俺を突き動かした。
兄さんを孕ませたい。
俺は何かに憑りつかれたのように兄さんを掻き抱いた。
猛り立つ自身を意識のない兄さんのナカに打ち付ける。兄さんを抱え込むように抱き締めて何度も何度も腰を激しく振る。逃げるわけないのに逃がさないように兄さんの小さい身体を抱き締める腕に力を込めた。兄さんが撃ってくれた、名誉の負傷をした左手に巻いた包帯が赤く染まっても痛みは全く感じなかった。否、その"兄さんが付けた"痛みさえ今の俺には興奮材料だった。兄さんが俺に痕を残してくれたということが酷く嬉しくて俺の動きは激しさを増した。
兄さんに種を付けたい一心で腰を振り続ける。ぐちゃぐちゃとナカで血と腸液と俺のカウパー液が混ざる音がする。粘着質なそれが俺の耳を犯して頭が沸騰しそうなくらい熱くなり、その熱がドロドロと理性を溶かしていきさらに本能を剥き出しにさせる。腸壁が異物を排除しようとうねるがそんな無意識の抵抗も愛しくて仕方ない。それどころかうねる度にナカが締まって本当は俺のザーメンを搾り取りたいんじゃないかとさえ思えてしまう。
「兄さん…兄さん…!」
早くナカに出したい。俺のザーメンを腹一杯にぶち込んで孕ませたい。
気絶したままの兄さんが大粒の汗を全身に噴き出させながら苦悶の表情を浮かべ苦しそうに呻いているがそれを気に掛けられるほど俺に余裕はない。とにかく孕ませたい、それだけ。
「はぁ…はぁ、兄さん…兄さんを孕ませたい…可愛い、俺の兄さん…兄さんは俺のモノ、俺のメスだ…兄さんは俺だけの…」
兄さんの白い項に齧りつく。ガブガブと項を噛みながら奥を突き上げた。そうすると酷く安心する。生殖行為中にαがΩの項を噛むとΩは快楽を感じるようだがαも同じように快感を得られる。支配欲を満たされ自分の種を植え付けられるということが堪らなく気持ちがいい。
「兄さん射精すから、ちゃんと受け取って…それで俺の子ども産んでよ」
当然兄さんから返事はない。けれど俺には関係なかった。俺が兄さんのナカに入った瞬間から兄さんは俺のモノなのだから、兄さんが孕むのは当然のことだ。
「うっ、くっ…射精る!」
限界が来て俺は最奥を穿った。瞬間、びゅるびゅるとザーメンがモノから飛び出して兄さんのナカを満たしていく。それでも俺は満足できなくて貪欲にナカにモノを擦り付けた。最後の一滴までナカに出さなくてはならないと無意識のうちに腰を振り続けた。
「はー…はー…ぁぅ、あ"ー…」
出し終わると倦怠感が一気にやって来て全身が重くて仕方ない。けれどそれ以上に兄さんのナカに種を付けられたという事実に対する満足感や幸福感に俺は満ちていた。少し腰を動かせば兄さんのナカでぐちゃぐちゃと精液が混ざる音がしてまた自身が首をもたげそうになる。しかし、射精して多少冷静になった理性でそれだけは回避した。次に何をすればいいのか停止しかけた思考をフル回転させて何とか鉛のように重い身体に力を入れ兄さんを抱えて風呂場に向かった。
兄さんからメイド服を剥ぐと俺の頭は急激に冷えていく。兄さんの白い太股を伝う赤と白を見て全身から血の気が引いた。
「ヤバい…俺!」
そして自分の犯した事態の深刻さに気が付いた。
全て終わってから初めて俺は"兄さんに嫌われるのではないか"という恐怖を抱いた。
「…んく…いっ…てぇ…」
開きたがらない瞼を無理矢理開くと光が眩しい。知らない間に朝になっていたようだ。身体が、特に尻が重点的に痛いから昨晩のことは夢ではないのだろう。…夢だったらどんなによかったことか。
首を右に向けると額から乾き始めたタオルが落ちた。
「なに、これ……シャット?」
落ちたタオルの先にはベッドに顔を伏せて眠るシャットの姿があった。手にはタオルが握られている。
「シャット、起きろ…」
軋む身体を動かしてシャットの髪を軽く引っ張るとシャットは顔を直ぐ様あげた。
「目が覚めたの兄さん!大丈夫!?」
「だいじょうぶに、見えるか…?」
「見えない」
「その通りだよ、シャット、あのな…」
「ごめんなさい兄さん!俺、どうかしてた」
シャットは俺の手を握り眉を八の字に曲げて謝罪してきた。
「ほんと…どうかしてるわ。一応聞いておくけど、お前は俺を、そういう目で見てるのか?」
「そんなことない!俺、兄さんに名前を呼んで欲しいし頭を撫でて欲しいし抱き締めて欲しいけどセックスしたいなんて思ってない!」
「じゃあ、なんで…」
「そ、それは、兄さんがあまりにも女装が似合ってたから…」
「あぁ…お前はそういうのが趣味なんだもんな…」
「信じて兄さん…俺、ほんとに普段は兄さんのことそんな目で見てないから…!き、昨日は…その、頭がボーッとしちゃってて…」
「はぁ…そういえば溜まってるとか言ってたしな…でも気絶するまでやるとは」
「…ごめん兄さん、実は兄さんが気絶した後、続きをして中出しもしちゃった…」
「おまえ…」
怒りを通り越して呆れて開いた口が塞がらない。キャパシティーオーバーしてるよ。何言ってんだこの弟は。
「兄さん、ごめんなさい。もうしないから、絶対しないから俺のこと嫌いにならないで…」
「うぐ…」
叱りつけてやろうとシャットを睨むと、シャットはベッドの縁で手を綺麗に合わせて、雨の中段ボールから顔を出してこちらを見つめる捨てられた子犬みたいな目で俺を見つめていた。赤い右目はうるうると涙を滲ませ今は髪に隠れた左目も涙をたっぷり溜めているのだろう。ここで俺に見放されたらもう自分は死ぬしかないみたいな鬼気迫る表情を浮かべ許して欲しいと首を傾げている。
「そんな目で見られてもな…」
「兄さん…」
甘ったるい声で呼ばれる。眉尻を下げ見上げるシャットの姿が、幼い日枕を抱えて不安げに俺の部屋にやって来たときと重なる。
「………………………………………………………………………もうしないって約束できるか?」
「!!できる!できるよ!」
シャットの顔がパァッと明るくなる。周りに花が咲いたようだ。そこだけ見れば可愛くて抱き締めてやりたいのだが。
「今度からはちゃんと優しくするから!安心してね兄さん!」
「え?優しくするってどういうこと?もう、俺はしないよ?」
「え?してくれないの?」
「え?逆にまだする気だったの?」
「うん、だって兄さんのナカ凄く気持ちよかったし」
「いやいやいや!俺、もう勘弁だからね!?絶対しないから!」
「なんで?」
「それは俺が聞きたいよ!なんでシャットはまだしようと思えた!?」
重たい身体を起こして叫ぶとシャットはなんで兄さんは怒ってるんだろう?みたいな目で俺を見上げている。
「絶対しないから!俺の身体が持たない。それにシャット、お前は実の弟だし」
「…あのガキとはするくせに俺とはしてくれないの?」
「ガキ…?」
なんだか怪しい雲行きになってきたぞ。
「あのΩのガキ。あいつとは何回もセックスしてるじゃないか。なんであいつはよくて俺は駄目なの?」
「俺の過去を"視る"んじゃない…!少年とするのは性欲処理だから…発情期のΩってのはどうしようもないんだよ。仕方ないだろ」
「へぇ…性欲処理だったらするんだ」
「まぁ…しょうがないかな…俺が相手してやるしかないだろ」
「ふーん。じゃあ、俺も兄さんに性欲処理してもらいたいな?」
「は?何言って…」
「性欲処理ならしてくれるんでしょ?なら、俺も兄さんに相手してほしい」
「な!?お前はいくらでも相手探せるだろ!?」
「ちょっと難しいかな。兄さんほどの名器はいないよ」
「めっ!?~~っ!シャット!」
「αだってフェロモンに当てられるとどうしようもなくなるんだよね。…俺のことは助けてくれないの兄さん?」
「うぐぐ…また誘導したなシャット…!」
「言質は取ったからね?」
人指し指を口元に持っていきながら、ね?と可愛らしく首を傾げ得意気な笑みを浮かべるシャット。
「う~~っ!もう、絶対誘導尋問になんか引っ掛からないからな!」
年下に流されるのはこれっきりにしてやる、心中で決意する。絶対、絶対言うことなんて聞いてやらない!
とか言いながら尻の怪我が癒えた頃しっかり俺は流されたので是非笑ってくれ。以上!
αはβに秘密の女装"させる"癖がある
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