アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
*05*
-
***
一体なにをさせられるのだろ…そう思うと昨日はあまり眠れなかった。
寝不足の目をこすりながら、普段通りの時間に登校すると、俺の願いが届かなかった事を思い知る。
アツキはマスクをつけ、窓際にある自分の席に座り、ぼんやりと外を見ていた。
もう、周知済みなのだろうか?
そう思い、チラリと教室後方を確認した。
ハルト達は既に登校済だが、俺やアツキに構うことなく、誰かのスマホの画面を覗き込んでは、ゲラゲラと下品な笑い声を立てていた。
もしかすると、昨日のことなど、すっかり忘れているのかも知れない。
ここは、あいつらがなにかアクションを起こすまでは、おとなしくしていた方がいいだろうとも思ったが、アツキの体調も心配で、少し悩んだあと、俺は自分の席は素通りしてアツキの席へと歩を進めた。
「よお、もういいの?」
普通にするつもりが、少し上ずった声を上げてしまい、焦った。
俺の微かな動揺など、微塵も気付く様子もなく、アツキは気怠そうな顔をこちらに向けた。
アツキはいつも、全てがつまらないと言った顔をしていた。
今日のこの気怠そうな顔も、風邪なのか、普段通りなのかは判別できない。
「まあ、熱はない。ってか、昨日も別に休む程じゃなかったんだけど…」
「風邪を理由にサボった?」
「ん?まあ、そんな所。」
アツキが小さく笑う。
他のやつにはあまり見せない、笑顔だ。
俺が、他の奴らに比べると、自分でいうのもなんだが、ちょっと抜けてるっていうか…認めたくないが、天然ってよく言われる性格だからか、アツキは、俺にだけちょっと優しい。
多分、今は離れて暮らしている弟と重なるんだろう。
そのやわらかな笑顔を見ると、なぜか、それ以上、言葉が続かなかった。
「どした?」
まじまじと顔を見すぎたか、アツキが眉間に皺を寄せた。
「いや…」
様子からして、罰ゲームのことを告げられていないのだろう。
それならば、俺から告げる必要もあるまい。
「なんでもない。風邪、早くよくなるといいな。」
「ん。ありがとな。」
そう言うと、アツキは、再び窓外へと視線を戻した。
俺は、妙にぎこちない笑顔を作ってしまった事を、気にしながら、踵を返し、自分の席へと向かう。
――何、意識してるんだ俺?
席に着くと、どこからともなく恥ずかしさがこみ上げた。
それをぬぐい去る様に、俺は頭をブンブンと振る。
やっぱり、アツキ罰ゲームのことは知らないのだろう。
俺もそのことを忘れた振りして過ごそう。
そうすれば、今日だけじゃなく、今後も穏やかに過ごせるだろう。
――どうか、何事もなく今日を乗り切れますように…
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
5 / 31