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ノスタルジア ③
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ばあちゃん家で過した3日間は、とても楽しかった。
十四松と二人きりであんなに長く居たのは、後にも先にもあの時だけだ。
十四松は、小さい子供の様にはしゃぎ回っていた。
「どっちが、いっぱいセミ捕まえるか、競争!!」
戻って来たあいつの虫かごには、気持ち悪いくらいにセミが入っていた。
「うるさいから、逃がす!」
そう言って、開け放ったカゴから一斉に飛び立ったセミが俺に張り付いてきたのは、今でもちょっとしたトラウマだ。
川遊びもした。冷たい水が気持ち良かった。
俺は流れの速い、深い所が怖くていつも足をつけるくらいだったけど、泳ぎの得意な十四松は、どんどん泳いで行ってしまう。
十四松が居なくなるんじゃないかって、不安で片時も目が離せなかった。
夜には、ばあちゃんが買っておいてくれた花火をしたり、ぼんやり縁側に座って、満天の星空を眺めたりした。
「プラネタリウムみたいだね。」
って、十四松は言ったけど、それよりももっと綺麗だった。
「あっ!流れ星!ねぇ、一松、何かお願いした?」
「間に合わなかったよ。」
「三回言うの、難しいね。」
「十四松は何を願うの?」
「うーんとね。一松とまた、来れますようにって。」
「それって、わざわざ星に願わなくてもよくない?」
「そっかなぁ。じゃあ、一松、約束してくれる?また、来るって。」
「うん。いいよ。約束。」
そう言って、指切りした約束は、結局、嘘になった。
見慣れない景色と、違う枕のせいで、寝付きが悪かった。
いつもは、一番遠くに居る十四松の顔を見詰めていた。
クルンと寝返りをうった十四松の手が俺の胸の辺りに落ちた。
その手をそっと取って、指を絡める様に握った。
十四松の手が握り返してくれたように、ぎゅっと力が入った。
温かい手の温もりと、安らかな寝顔を見ている内に、俺も眠りに落ちていた。
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