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『もしもし。』
ハスキーな声が椿の耳を擽る。
心地いい音のくせに、どこかおちつかなくなる智の声。
じんわりと甘い痺れが体に広がって、余波が肌を駆け巡る。
椿は変な声を出しそうになるのを堪えた。
「あ……もしもし。えっと椿です」
「はは、智です。さっき話してたんだから誰だかわかるのに、どうして名乗るの?」
「えっ、と。なんとなくですかね……」
智です、の響きにきゅんとする。
さとし、いい響きだな、なんて思って。
多分この人のものならなんでもいいと思っちゃうんだろうな。
椿はぽすっとベッドに横になった。
普段なら外出した服でベッドに横になることなんてないのに、それすらどうでもよくなってしまうほど夢中だった。
「なんとなく?はは、変な子だな。」
「変じゃないですよ……」
「そうかい?確かに自覚があったら怖いね。……あのあとさ、何してたの?」
「あのあと?」
あのあと、とは。
椿はだいたい予想はついているのに、たどたどしく聞き返した。
するとすぐに返事が返ってきた。
「そう、僕と別れた後。」
ぐるぐると映像が椿の頭の中を駆け巡る。
智と別れた椿は、次の授業を受けるには早めに学校に着いてしまって、教室でくつろいでいた。
何を話そう、どこまで話そう。
相変わらず迷う椿。
「あ、学校行きました。」
「学校……。学生だっけ?」
「はい、大学生です。」
「へぇ、この近くの学校?何大学?」
他愛のない会話が続く。
その奥で、もそり、ごそり、と音が聞こえる。
……何の音だろう……?
椿はだんだんと会話の内容ではなく、その音に気を取られはじめるていた。
この人何してるんだろう。
「N大です」
「へぇ、N大?頭いいね」
「へ?!いや全然!」
「んー?そんなことないだろ。ここら辺で一番いい大学じゃないか」
「土井さんに言われても嬉しくないです」
「はは!どうして?」
「だって土井さん絶対俺よりいい大学行ってるでしょう」
「んー?分かんないじゃないか。」
「わかります。」
電話越しだというのに思わず頬を膨らませる。
するとそれが見えているかのような反応が返ってくる。
「はは、拗ねないでよ。」という柔らかい声とともに、何故か頭を撫でられるような感触を感じた。
ぐらりと頭の中の何かが揺れて、椿は心の中で叫んだ。
好きだ、好きすぎる!!!!
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