アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
43
-
「何なのあいつ……いったいし……」
ぽそりと呟いた椿は先ほど裕人に抓られた太股を擦りながら顔を歪ませる。
しかし内心二人きりにしてくれてありがとうという気持ちは忘れていない。
「なかなか言う子だね」
智がポツリと言葉を発して、出口を見ていた椿ははっとすると智に意識を戻した。
「え?!あ、裕人……あー……普段あんな感じじゃないんですけど……割といいやつなんですけど……ごめんなさい不快にさせちゃいました?」
「ううん、君が謝ることじゃないよ。それにびっくりしただけだから。」
先ほどとは変わらない笑顔で頷く智に、椿は申し訳ないと心の中で謝った。
あとで言ってやろう。
あいつほんと、なんか今日おかしい。
「嫌われちゃったかな。まぁ少し詮索しすぎたのかもしれないな……。椿くん、食べたいものは決まった?」
「あ、はい。えっと、ナポリタンで」
「本当?ピザは?」
「あ、今度にしよっかなって。ナポリタン見てたら美味しそうで食べたくなりました。」
「そう?じゃあ僕はオムライスにしよう」
オムライス。
椿はメニュー表をペラペラとめくるとそれを見つけた。
デミグラスソースがかかっていてとても美味しそうだ。
いつもお洒落で、椿から見ると大人だなと感じるような食べ物しか食べているところしか見たことがない椿は、顔を綻ばせた。
こんなものも食べるんだな。
なんか、親近感。
「意外と可愛いもの食べるんですね」
「えぇ?かわいい?……変えようかな」
「いやいや!」
拗ねたように言う智に笑いながら手を振る椿。
智もそれに合わせて笑うとその二つを注文した。
「でも知らなかった。椿くん朝弱いんだね。」
「え?あぁ……もう、裕人のやつ余計なこと言いやがって……」
椿がもごもごと口を動かすと智が小首を傾げた。
きょとんと目を丸くしている。
「どうして?」
「だって、情けないじゃないですか。こんなふうに未熟なの土井さんに知られたくなかったなって……」
好きな人の前では自分をよく見せたいと思ってしまうもの。
裕人の前なら気にしないそれらも、智の前では気にしてしまう。
「えー?僕はなんでも知りたいよ。それに体質だし仕方ないものじゃない。低血圧の人って朝しんどいらしいね。」
「そうですか?でもなんか、そういうのって自分でどうにか出来る問題じゃないですか……」
「そう?僕も起きられない日あるよ。でも、すごく面倒かかるって言われてたね。ほかにもあるの?」
優しい顔で諭してくれていたくせに、一気にいたずらっ子のような表情をする智。
椿はあっと声を出すとぶんぶんと首を左右に振った。
「そ!れは!あいつが勝手に世話焼いてくるだけで!」
「ほんとかな?」
「本当です!自分でちゃんとできます!」
「ふふ、なんの話してるんだろう」
「ちょっとーー!意地悪だーー!」
自覚アリな様子を引き出されてしまって椿は頬を両手で挟むとうーと声を出した。
いつもこうやって弄ばれてしまう。
たまには弄びたいのに。
俺がこの人を翻弄するような日が来ることはないのかな。
「でも世話焼きたくなるんだろうね」
「え?」
「ううん、こっちの話」
そんなことを考えていたくせに、料理が運ばれてくれば目をキラキラさせてフォークを取り出す椿。
智はそれを見つめると目を細めた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
43 / 131