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世の中にはいい人ばかりじゃない。
君みたいに綺麗な子ばかりじゃない。
薄汚れた大人だって沢山いる。
すっかり発情した椿を見下ろした智は、自身が興奮していくのを感じて下半身に手をかけた。
自分が運命の相手だと疑わない少年。
自分は疑っていた。
正直この子の言う運命の番なんて迷信だとしか思っていなかったから。
なぜなら、僕はオメガが苦手だから。
オメガが嫌い、それどころじゃない。
番制度が大嫌いなのだ。
本能で惹かれ合うオメガとアルファ?
たまったものじゃない。
自分の意志とは関係なしにヒートが起こって、オメガに精液を注ぐことしか考えられなくなる。
自分は本能で動く動物的な瞬間が嫌いでならない。
人間は常に理性的であるべきだろう。
それが、人間だけに与えられた能力なのだから。
突然目の前に現れて、付き合って下さいってオメガに言われた日はどうしていいか分からなかった。
体験したことがない訳じゃない。
今まではうまく交わしてきた。
適当に言葉を並べてあしらってきた。
甘い香りに惑わされないように自制をしていればなんら不便なことは無かった。
それなのにこの子に限っては、僕の経験がすべて皆無になるような例外の存在だった。
初めから漂ってきた強く甘い香り。
気付かずに彼の腕を引いたのも惹かれたからだったのかもしれない。
自分より20も近く年下の男の子にどうしてこんなにも惑わされるのか。
乱されるのか。
腹立たしいのに放っておくことが出来ない。
「椿くん、挿れるね」
「あ、ぁ……あぁあ……っ」
こんなにも自分を歓喜に打ち震えながら受け入れてくれる体。
一挙一動に、五感全てで必死に応える体。
可愛くて愛おしくて仕方がない。
きゅうきゅうと締め付けてくるそこが愛おしくて、堪能するように腰をスライドさせた。
「智さん……きもちぃ、きもちいい……っ」
「僕も気持ちいいよ、椿くん」
「よかっ、たぁ……っ、」
「可愛いなぁ……っ」
オメガだから。
そう躊躇っていたが、もうその問題は自分の中で肯定する理由へと変わっている。
僕だって彼に自分の子供を産んでほしい。
本能がそれを望んでる。
ずっと一緒に居られたらどんなに幸せだろう。
君と過ごす毎日はさぞ幸せだろうね。
だけど僕にはそんな資格はない気がする。
きっとこれを話してもこんな優しい彼のことだから「気にしない」なんて言うんだろう。
でも枷になるのは確か。
それなら思い切り可能性を潰した方がいいのかもしれない。
逃げる僕を許してくれ。
こんなに卑怯な僕を許してくれ。
僕以外と幸せになることは、髪の毛をすべて毟りたくなるほど嫌なことなのに。
君を手放す勇気なんてないのに。
君を幸せにできる自信が無い。
君を大事にできる自信が無い。
「椿くん、こんなことを言ってしまう僕を許して」
「智さん……?」
溶けていた椿の瞳の輪郭が、智が抽送をやめることで徐々に形を留めていく。
智は椿の柔らかい唇に軽くキスを落とすと、眉を寄せた。
「椿くん、君のことが僕は好きだよ。」
「さとしさ、」
智の言葉にブワッと顔を赤くして喜びを露わにする椿。
シーツの上を泳いでいた手が智に伸びてきた。
けれど智はその手を掴むと再びシーツに縫い付けて、首筋にキスをした。
ぴくんと、反応を返してくる椿。
そんな椿に智は口を開いた。
「だけど付き合うことは出来ない。聞いたね、昨晩僕がオメガのことをどう思っているかって」
「あっ、なんで、なんでいま、なんで今言うの?」
「僕はね、オメガのこと――――。」
言わないでと言いたげな椿を無視して智は言葉を続ける。
大人になると逃げ道なしには生きられなくなる。
逃げ道を用意して、「ほら言ったでしょ?」っていうセリフを残していつでも切り捨てられるように。
切り捨てられてもいいように。
「…………っ!」
智の言葉を聞いた椿の目が見開かれた。
ショックを受けているのだろう。
「酷い、酷い……っ!」
「僕達は確かに運命の番、なのかもしれないね……」
「酷いよ智さん、ひどいっ、酷い……っ」
「ごめんね椿くん」
「あっ、あ、ぁ、なんで、なんで今言うの?……っあ、……酷い、俺が、俺が智さんのこと、嫌いになれないの、知ってて……っずるい……ずるいよ……っ」
首筋を甘噛みして、腰を揺らせば響く水音。
火照った鎖骨。
「ひっ、ひぅ……っうっ、あぁ……うぁあ……っ」
泣かないでなんて無責任なセリフを用意しながら、残酷なのは世の中ではなく自分なのだと再確認した。
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