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椿が家に帰って数時間後、智の仕事が終わったのだろう。
椿の携帯にはメッセージが来ていた。
『昼間はごめんね。椿くんが大丈夫なら、僕も会いたいよ。』
僕も会いたいよ。
その文面に心臓がぎゅっと掴まれたような感覚になって、椿は顔を覆った。
つくづく簡単なやつだと思う。
自分でもそう思う。
だけどそれだけで今までのこと全部どうでもいいかなって思うぐらい嬉しくて、椿ははぁーとため息を吐いた。
「いつが暇ですか?」
あくまで平静を装った返信をする椿。
けれどもきっと智には自分の様子は筒抜けのようなものなのだろう。
智からはすぐに返事が来た。
『今からとかどうかな。』
時刻は9時を回ろうとしているところ。
それを見ながら椿は思わず「あー……」と声を出した。
嬉しい、幸せ。
もう、会えるだけでいい。
なんて思っちゃって、なんて盲目的なんだろう。
ダメだなぁ俺。
でもすごい好き、嬉しい。
会いたい。
「全然大丈夫です。」
『ありがとう。家まで迎えに行ってもいいかな?よかったら位置情報教えてよ。』
「了解です。」
位置情報を送ってからはっとする。
智は結婚していると言っていた。
それなのにこんな時間に外に出て大丈夫なのだろうか。
思えば日曜日とかにデートしたこともあった。
子供がかなり大きいのだろうか?
にしてもこの時間に外に出たら怪しまれるものなんじゃないだろうか。
……位置情報なんか送って智さんの嫁さんにバレたりしたら……。
まずい……智さんが来たら会話履歴ちゃんと消してもらうように言っとかなきゃ……。
椿は服を着替えながら一抹の不安を覚えると、智が来るのを待った。
心臓がドキドキしてそわそわする。
今にも飛び出してしまいそうなワクワク感を感じながら、駅まで行くと言うべきだったろうかと考えた。
1秒が2秒のように感じて時間があまりにも進んでくれない。
たまったものじゃないと椿は携帯のゲームを開いてゲームをし始める。
しかしソワソワとして集中出来ず、失敗してばかりで何も解決はしなかった。
『着いたよ』
そう連絡が来たのは最後のやり取りから15分ほど経った時だった。
椿は慌てて靴を履くと外に出た。
上から見下げると路肩に黒のスカイラインが停まっていた。
椿は慌てて降りるとその車に駆け寄った。
「智さん」
「こんばんは、椿くん。」
助手席の窓が開いて、にこりと微笑んでくれる智の服装はスーツだった。
仕事が終わったそのまま来たのだろうか。
「ごめんなさい突然」
「ん?いいよ。僕も会いたかったから。」
「……はい……。」
しっかりと聞く声は鼓膜を揺らして心地よく脳まで届く。
椿はそれを聞きながらゆっくり頷いた。
智さんだ。
ちゃんと目の前にいる。
昼間は動転してそれどころじゃなかった椿だが、今は智だけに集中している。
窓から智を覗き込みながら、顔が緩んで行くのを感じた。
会えたという幸福感に考えていたことや、今までの不信感が全て吹っ飛んでいく。
「近くおいでよ。乗って」
「あ、はい……。」
智が助手席のドアを開けてくれる。
椿はそこに乗り込むと一気に距離が近くなった智を見上げた。
「触ってもいいかな?」
智も智で甘い声を出す。
そのせいで椿は顔をとろんとさせる。
「ん……、どうぞ……」
「ありがとう。」
前乗った時はかかっていた音楽が掛かってない。
シン、とした空間。
狭い空間で感じる匂いは恋しかった智の匂い。
甘くてスッキリしているいい匂い。
鼻腔から吸い込んだその香りはじわじわと椿の体に浸透していき、思考を痺れさせていく。
椿が背にあるシートに手をついて、体ごと智の方を向けば智が椿の頬に触れた。
頬に触れる自分より少し温度の低い手。
ゴツゴツしている大きな手が椿の頬を包み込んだ。
「この前はごめんね。」
「……いえ……。」
「あんな時にいう言葉じゃなかった」
「……素直に言ってくれて良かったです。」
「本当?」
「言ってくれないより……。」
自分があまり何を言っているのかわかっていない。
椿の耳をするすると撫でる手に、椿はうっとりしながら目を伏せた。
気持ちいい……。
「可愛いなぁ椿くん」
「ん……?」
「すごく可愛い」
薄らと目を開けば、目を細めて椿を見つめる智の目線と視線が絡み合った。
耳にあった手は移動して椿の唇をふにふにと弄り始める。
唇を刺激されて椿は口を少し開けると、舌を出しそうになるのを我慢した。
「んぅ……」
「キスしてもいいかな?」
返事をする前に智の手は離れてしまって、もう触れそうな距離まで近くなる智の唇。
椿は小さく頷くとその唇に唇を押し当てた。
「……ん」
「は」
ちゅ、とリップ音を立ててすぐに離れる唇。
お互いの目線が絡み合って、体がカッと一気に熱くなった。
だめ、あぁでももっと。
「智さん、もっと」
目の前から車が来て、明るいヘッドライトに照らされるのも構わず椿は身を乗り出すとそのままさらに唇を押し付けた。
気持ちいい。
うれしい。
溜まっていた気持ちがどんどん溢れ出して、歯止めが効かなくなるような感覚に陥る。
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