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智が自分の部屋で自分のベッドで隣に寝ている。
かなり窮屈な空間で椿は情事後特有の気だるさに微睡みながら智を見つめた。
智もかなり疲れたようで眠そうにしている。
「椿くんごめんね」
「え?」
「ううん、なんでもないんだ。」
智の腕が伸びてきて、椿の体を抱き寄せる。
少し汗ばんだ体に抱き込まれて、椿は心地良さに目を細めた。
落ち着いてきた鼓動を感じながら、ダイレクトに体温を感じる。
智という存在を十分に感じられて椿は幸せを感じていた。
「シャワー浴びます?」
「椿くん先行ってきなよ」
「あ、いや……智さんがお客さんですし」
動けそうにない。
鉛のように重い体にフワフワした感覚。
体を起こすことすら億劫に感じて椿は苦笑いした。
「そう?」
「はい。」
それなら、と言いながら椿を解放した智は体を起こして風呂場に向かう。
部屋から出ていった智を見送ってから、椿は近くにあったはずのリモコンを探し当てると部屋の電気をつけた。
真っ暗にしているときっと眠ってしまう。
だんだんと冷めていく熱。
だんだんと冷静になっていく頭。
しかし体は入眠しようとしている。
椿は目を伏せたまま寝返りを打った。
俺が智さんの子どもを産めたらどんなに幸せだろうか。
このままいつもそばにいてくれる人生があったらどんなに幸せなんだろうか。
自分のものにしてしまいたい。
自分だけの智さんになってほしい。
それなのにあの人には自分より大事な愛する人がいる。
自分が一番になれればいいのに。
自分だけがこの愛を一身に受けられたらいいのに。
「ごめんね椿くん、先いただきました。」
「あ、いえ。」
「シャワーあびる?」
「……」
「どうしたの?」
智が椿の頭を撫でる。
椿はそれを受けながら智を見上げた。
「智さんの……子供っていくつなんですか?」
「え?」
「結構おっきいですか?もしかして俺と同じぐらい?」
「椿くん」
智の手が離れていく。
椿はゆっくりと体を起こすとベッドに座った。
「俺がもっと早く生まれていればよかったんですかね。」
智と自分が年があまり変わらなかったら。
もっと早く出会っていればなにか変わったんだろうか。
「……。」
「もっと早く生まれて智さんが結婚する前に声をかけていれば何か変わりました?」
「……ごめん椿くん。」
運命の相手だというのなら、その先の未来まで保証してくれていればいいのに。
そうしたらこんなこと起こらないのに。
智から目を離した椿は手を握って眉間にシワを寄せた。
「智さんが謝ることじゃないって言うのはわかってるんです……でも、」
「……椿くん」
「でもどうしても俺好きなんです。これ以上ないぐらい好きで分かるんです、これ以上好きになれる人なんて居ないだろうって。智さんに触れられるだけで幸せで、気持ちいいんです。」
そう、好き。
好きで一緒に居たい。
この人のためなら俺は多分なんでも捨てることが出来るんだろうなってぐらい、好き。
智さんも同じならいいのに。
自分と同じように全て捨ててくれればいいのに。
それを望む自分は子供で、浅はかなんだろうか。
智は困ったような顔をしていた。
「智さんは今日、どうして俺と会ってくれたんですか?」
「どうして……」
「俺と会うの最後にしようとか思ってました?聞かせてください。」
本当に最後にしよう、なんて言われても自分は聞き入れるつもりは無いけど。
正直椿には智が何を考えているのか全く伝わってこない。
「思ってなかった。僕はずっと君に会いたかったから。」
「うん……。」
「でも、そうだよね、僕が悪い。これ以上会わない方がいいのかもしれない。」
智が椿の隣に座りながらそんなことを言う。
椿は智を見ると首を振った。
「そんなの、無理です。」
「僕もそう思うんだ。日に日に君のことが頭から離れなくなる。毎日会いたいと思うよ。でも……僕は正直君に僕以外の人を見つけてほしいと思ってる。僕と違って君は若いからたくさんの選択肢がある。将来有望な若者だからね。きっと僕以外の素敵な人も見つけられる。こんな僕を選ぶべきじゃないと思うんだ。」
「……本気で言ってるんですか?」
「本気だよ。そう思ってる」
「そんなこと、あるわけないじゃないですか」
あるわけない。
こんなに好きな人現れるわけがない。
根拠はないけどそう思う。
それだけは絶対だって言い切れる。
「現在だけで全てを決めるのは良くないことだよ椿くん。」
「嫌です。智さんも僕も一緒に居たいと思ってるのにどうしてそれを諦めなきゃいけないんですか?」
「君は何も知らないからそう思うんだ。いつか後悔する日がきっとくる。」
智が椿から目を離してそう言い捨てる。
その言い草に椿はムッとして身を乗り出した。
何も知らないとか、子供だとか、自分は大人だとか。
智さんはすぐにそういうことを言う。
俺が何も考えてないみたいに。
「決めつけないでください!俺は智さんと一緒にいたことを後悔する日なんて絶対来ない!」
「わからない。」
「智さんは俺をもし選んで後悔する日が来るんですか?」
「……わからない。」
わからない、という答えに息が詰まる椿。
わからない、から自分を選べないのだろう。
「智さんは……逃げてるだけじゃないんですか?俺が、そんなに怖いですか?」
「……人の心はそんなに簡単なものじゃないんだ。だから一時の感情に任せるのは良くない。君に……、ほかの大事な人ができるまで一緒にいようよ。大事な人ができたその時はすぐに僕のことは忘れて。」
「そんな人なんて出来るわけない」
「椿くん、お願い。」
智が椿の方を向き直って、真剣な顔で訴えかけてくる。
椿はその顔に気圧され、首を横にふることは出来なかった。
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