アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
12月10日
-
【Side.M】
「父さん…?」
視界を隠す手を退けなくても、声だけで、彼にはそこに誰が居るのか分かったようだった。
「千秋っ!」
椅子から立ち上がった父親の姿に、彼から手を離す。
「え?」
そして、床に足をついた彼の背中を押した。
「ちあ、き…?」
「…」
一歩、二歩、と。
ふらふらふらつきながら歩く彼の体を、父親が慌てて支える。
その瞳は堪えきれない感情で、歪んでいた。
「ミツ君っ…!」
「俺は、俺の欲でソイツの命を危険に晒した。あの時アンタが命の限界まで血を分けてくれなければ、俺は、アキと交わした約束を一つも守れなくなる所だった」
「…それは、」
「その謝罪と、感謝を、アンタにどう伝えればいいのか俺にはわからない。だが…これなら、喜んでくれる気がした」
当たりだったか、と問えば、父親はついに涙を零す。
「キミには、いくら感謝してもし足りない。本当にありがとう…ありがとうっ」
「…ああ」
そしてその腕の中で、彼は呆然と自身の足を見つめていた。
その、動く様になった足を。
「アキは…あんまり嬉しくなさそうだな」
「いや、多分驚き過ぎて固まってるだけだよ。この子が、歩ける様になって喜ばないわけがない」
「なんで言い切れる?」
「この子が歩けなくなった時、私達は心臓への負担を考えてリハビリを禁止した」
「…」
「泣いて、せがまれたよ。死んでもいいから、と。その頬を引っ叩いて黙らせたのは、私だ」
手招きする手に導かれ、2人の方へと歩み寄る。
「ミツ君、そこで」
そして彼らから5歩程離れた距離で足を止めた。
「おい?」
「ほら千秋。ミツ君に言う事があるだろう?」
「…」
「行っておいで」
彼の背を、今度は父親が押した。
「アキ」
「ミツさんのせいで、父さんに会えた嬉しさが吹っ飛んじゃいましたよ…」
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
40 / 42