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第三章第七節:魔王トド松4
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sideトド松
魔鏡の鍵は、直ぐには応えてくれなかった。
もっとも、僕が魔鏡の鍵を使うのは、これが初めてなんだけれども。
「大丈夫だよ。もう一回握って」
十四松兄さんに励まされ、もう一度力を込めようとした時、僕の拳から、光が流れ出たんだ。
光は、天に上がってゆく。
僕は光の中心で願いを込めた。
――全てを、元に戻して。
「なりませんっ!」
思わず、はっとして、顔を上げた。
目の前には、あの仮面のピエロが立っていた。
さっきのおそ松兄さんの攻撃を直に食らったせいか、弱っているようにこそ見えたが、度々俄かに感じていた狂気は、むしろ今、超絶にむくれ上がっていた。
――悪魔だ…
おそ松兄さんは、いつだって悪魔なんかじゃなかった。
悪魔は、今、僕の目の前にいる、此奴だったんだ。
でも、僕の気持ちは自分でも驚くほどに、穏やかだった。
僕はピエロな悪魔に、ただ笑い掛けた。
「なりませんと言っているでしょう!」
ピエロは、そんな僕に益々激昂する。
「魔の力をもって、今やっと世界は壊れ切ったのです!この魔鏡という虚空間の外は、何もない闇!『世界を絶望に染める』という魔国創始者の志しは、今やっと、世界そのものを壊すことで実ったのです。それを魔によって、元に戻されるなんて、決してあってはなりません!」
「あっダメ…」
隣から十四松兄さんの声がした。
僕に伸ばされたピエロの指先は、手は、身体は、桃色の魔鏡の鍵の光に触れると、ボロボロと砂に変わり、桃色に光る空へと舞い上がり、消えていった。
とてもあっけなく。
「この光の中で生きていられるのは、魔族だけなのに…」
十四松兄さんが呟く。
「…兄さん?」
「トッティ、大丈夫だよ」
そう言うと、桃色の光をまとった十四松兄さんは、僕が魔鏡の鍵を握る手に、その手を重ねてくれた。
「ほら、もう少しだよ」
「うん…」
僕は祈った。
十四松兄さんの手から伝わる何かを感じながら。
***
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