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第一章第三節:悪魔おそ松3
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sideおそ松
人狼が俺を連れて行った先は、サーカス小屋のような場所だった。
それなりに広くて、でも俺と人狼外は誰も居なくて、サーカス特有の派手な色使いの飾りと、人口密度の低さのギャップが、妙に不気味だった。
どうやってこの空間にたどり着いたのか分からない。
ずっと人狼と歩いていたら、いつの間にかサーカス小屋の舞台に立っていた。
「さてと、お前には前世の記憶を取り戻してもらう必要がある」
人狼は勢いをつけて、立ち台に腰を下ろした。
「前世の記憶?」
「そ。お前の弟が最後の魔王として蘇るためには、お前の前世の記憶が必要なんだとよ」
「え?」
「何だ?何も知らないのか?お前の弟が魔帝国時代の最後の魔王の生まれ代わりで、お前はその魔王の兄」
「えっ!」
「魔王の魔鏡ってのがあってな、その魔鏡の鍵は、魔王の兄が管理するって代々の決まりでよ。その鏡が開かねーと、魔王を蘇らせられねーし、蘇ったことろで、魔王の魔力が発揮できないって訳。らしいぜ」
「何なの?それ?」
「俺だって詳しくは知らねーよ。とにかく、お前には早く記憶取り戻してもらって、魔鏡の鍵の在り処を吐いてもらわねーとな」
察するに、トド松を魔王として覚醒させるために、俺を小道具として使おうって訳か。
何が目的なのか知らないけれど、こっちにしてみれば、どうでもいいことだ。
でも、どうしよ?
どうやってトド松を救出しよ?
前世の記憶とやらを呼び起こされれば、たぶんトド松に接近できる。
そしたら隙を見て、連れ出せる、かな。
でも、記憶と意識を前世のものに塗り替えられてしまったら、たぶん、俺は「トド松」のことが分からなくなるだろうし、今こうして考えている記憶も消えてしまう…。
「何考え込んでんだ?お前の意見なんて要らねーんだよ」
ガッと腕を掴まれ、人狼に引き寄せられた。
「やめろよ…っ!」
「うるせーな。ぐずぐずしてると、俺があいつに怒られんだよ!」
人狼は強引に俺の胸に手を当ててきた。
「いやだっ!」
阻止しようにも、片腕には鎖、もう片腕は人狼に掴まれていて術がない。
――助けて。
波が退くように、意識が遠くへ遠くへ流れていく気がした…。
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