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第三章第三節:兄さんの待つ家5
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side十四松
夜も三時を回っただろうか。
僕は、ふと目が覚めた。
おそ松兄さんは、眠っている。
トッティは…起き上がって、こっちを見ていた。
僕も起き上がると、トッティは不安気な顔で頷き、布団を抜けて、そっと部屋を出た。
僕もトッティの後に続く。
一階の居間に降りた。
「十四松兄さん…二階で眠っているのは、おそ松兄さんなのかな?」
トッティは、ちゃぶ台の上で組んだ指先を見つめながら話し出した。
「おそ松兄さんと話していた時は、今が現実な気がしたんだけど、夜中、さっき目が覚めた瞬間、怖くなって…。これは違うって」
「実は僕もなんだ…。ね、トッティ、ここは魔鏡の中なんだ。一度ここから出よう。それから――」
「何の話ししているの?」
僕の言葉は、最後までトッティに告げられなかった。
振り替えれば、襖を開けたおそ松兄さんが立っていた。
「おそ松兄さん!」
「ここから出ていくの?」
怖かった。
おそ松兄さんは笑っているのに、目が笑っていない。
「十四松も、トド松も、俺と一緒にいてくれないんだね…」
やっと聞き取れるくらいの囁くような声を聞いたかと思えば、次の瞬間に、カッとおそ松兄さんの体が光り、僕は反射的に目を瞑った。
そっと再び目を開けると、そこには、魔鏡の外で見た悪魔のおそ松兄さんが立っていた。
でも、最後に見た時のようなふてぶてしい感じはなく、もの寂しげな雰囲気を纏っていた。
「いいよ。俺のものになってくれないなら、俺のものにするから」
兄さんがポッケから取り出したのは、あの真っ赤な石ころみたいな魔鏡の鍵だった。
「おそ松兄さんっ…!」
僕の声は届かなかったかもしれない。
魔鏡の鍵がブワッと赤い光を放つと、一緒に強い突風が起こった。
「トッティ!」
「十四松兄さん!」
僕は涙目のトッティを、なんとか守るように抱き寄せた。
強過ぎる突風は、僕達をどこかに飛ばすつもりらしい。
「ぐぅ…おそ松兄さん…」
トッティの喚き声と、風圧に感覚を支配される寸前、ちらりと見えたおそ松兄さんの瞳は、ずいぶんと弱弱しげに見えた…。
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