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第1章 13
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「…ん……」
「……」
「あれ…トア?」
「………」
あ、あれ?
ここどこだ…?
もしかして、連れ去られたとか?さっきの人?
どうしよう
トア、トア何処なの
見えないよ、目の前真っ暗だよ
トア、トア…
怖さに涙が溢れる
身体がガクガク震えて止まらない
息が、うまく吸えない…
「トアっ、ねぇ…?トアぁ……」
「…んぅ…っ、……何だ」
「あぁ、トアっ、トア、怖い、怖いよ」
「…平気だよ、ほら」
俺を包んでくれるのは布団じゃなくて
暖かくて、甘い香りがするトア
大好きなカクテルの香り
トクトク鳴ってる心臓の音
それでも息が吸えない
死んじゃうのかな、俺
「ほら、大丈夫。…俺の心臓の音、聞いて」
「んっ、ふ…っ、ふぁ、は…っ」
「そう。…吸って、吐いて、吸って…」
背中を撫でてくれる不器用な手
耳元にかかる柔らかい息と声
全身を包む温もりに
自ら手を伸ばしてしがみついて
「……トア…」
「…まだ夜だよ」
「………ん…」
涙が一粒コロリと頬を伝って落ちていく
トアがそれを優しく取ってくれる
「………トア」
「……。…此処に居る」
「……う、ん…」
「…だから、まだ目を閉じて。
朝が来たら、起こすから。お前が、怖くないように。暗い世界に、居ないように」
まるでそれが魔法のように
俺は、トアの腕の中で眠った
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