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同窓会④
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「…俺、中学の時な、両親の仕事の関係で転校ばっかりで、なかなか馴染めなかったんだ。それに自慢じゃないが元々頭だけは良かったから、学校なんて行く意味無いって思ってた…嫌なヤツだったよ本当に」
正直、先生がそんな中学時代を送って来たなんて…あまりのイメージの違いに驚いた。
先生は話を続ける…
「でも中学二年の時の担任の先生が、すごく良い先生で、学校に姿を見せない俺に、毎日会いに来てくれたんだ。たった小さなプリント一枚でも家まで先生が直接持って来てくれて…初めはウザイと思ってたけど、気付けば好きになってた…」
‘好きになってた,
先生の口から吐き出された言葉に、チクリと胸が痛んだ。
「ある時、自分の気持ちを押さえきれなくなって告白してしまったんだ…勿論答えはNOだよな。でも俺は先生の優しさに付け込んで、先生の事も諦めるし、ちゃんと学校に行くからキスして欲しいって言ったんだ」
その時の吉井先生が、どんな思いで先生に告白したのか、並大抵の勇気じゃなきゃ無理だと思う。
俺には自分の気持ちを告白する勇気は無かったから…
まぁ俺の場合は、相手が吉井先生という男だったから…気持ちを伝えるあと一歩が踏み出せなかった理由なんだけど…
「それがファーストキスですか?」
「あぁ…初めから無理な事は分かってたんだ先生は、結婚して奥さんもいて…」
ん…あ、あれ?
「ちょ…ちょっと待って下さい⁉︎先生…そのファーストキスの相手って、女の先生じゃなくて…その…」
「あぁ…男だ」
って事は…中学の時、吉井先生は男の先生の事を好きだった訳で…
言ってみれば、吉井先生の事が好きだった俺とまったく同じ立場だったって事か?
「だから、お前にキスされた時は驚いたよ…まさか教師になって俺があの頃の先生の立場になるなんて…」
そう言って先生は恥ずかしそうに笑った。
先生は、あの時キスした理由を‘つい,で誤魔化した俺の気持ちに気付いてたんだろうか?
今なら言える気がする。
「先生…俺…好きでした先生の事…」
10年たって、やっと言えた…
「あぁ…確信は無かったけど、なんとなく視線で気付いてた…お前、席替えのたび目悪いからって言って教卓の真ん前陣取ってただろ?本当は視力2.0のクセに」
あ…
「バレてたんですか…ははは」
「バレバレだ。だから見透かされない様に俺も必死だった。俺がその…そういう種類の人間だって…」
「男が好きだって事をですか?」
そう問い掛けると、先生はコクリと頷いた。
「お前にキスされた時、とうとう見透かされたと思ったよ。中学の一件以来、必死に隠して生きて来たから」
「俺、別に気付いてた訳じゃ…」
「でも、俺はなんとなくお前の気持ちに気付いてたから責任感じたんだ。俺が先生とキスした事を後悔した様に、木下もきっと後悔すると思って」
「俺、後悔なんてしてません…何で先生はそう思うんですか?」
俺はあの時、先生の唇に触れられた事が、ただ…ただ…嬉しかった。後悔なんてこれっぽっちも…
「お互いの気持ちが向き合って無いキスなんて、悲しいだけだと思わないか?」
先生は俺に諭す様にゆっくりとそう言った。
「それでも!俺は…嬉しかったです」
「そうか、ありがとな。なんか、スッキリしたよ…それじゃあ、俺はそろそろ…」
先生は時計を見つめ立ち上がると俺の方を向き直りそう言った。
伝えたかった事はちゃんと伝えたはずだ。
それなのに、まだ胸の奥で何かが燻っている気がする…
「先生!!」
気付けば俺は立ち去ろうとする先生の腕を掴んでいた。
「どうした?」
「先生の事が好きでした」
「あぁ…だからそれはもう聞いたぞ?」
違う…
「今も好きです」
現在進行形で…
「木下…」
先生は意味を理解したのか俯いて少し考え込んだ後、口を開いた…
「お前…恋人は?」
「つい最近別れました」
お互い本気になれなかった…だから別れた。
「そうか…お前はまだ若いし、もっと良い恋愛が出来るよ…でも、その相手は多分俺じゃないと思う」
「先生はそうやって、またあの時と同じ様に俺から逃げるんですか…」
「…どう思われても構わない。離してくれないか?」
また先生を困らせてしまった…だけど、このまま一生会えなくなるのは嫌だ。
「分かりました。そのかわり、リベンジさせて下さい」
あの夏の…
あの時のキスを…
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