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近くで話す近所の人の噂話が、俺の耳に届いた。
事故が起きたのか、救急車はそれか…
一つ一つ俺の頭の中で辻褄が合う。
俺は、その会話に耳を澄ます。
「花崎幼稚園のそばにスーパーがあるでしょ?あそこの前に交差点があるじゃない。元々あそこは事故が多い所だったけど、あそこで車と自転車が衝突したのよ」
「え、知らなかったわ。子供じゃなくて良かったわね…」
「それが…自転車に乗っていたのが福田さんとこの奥さんだったみたいで…」
まだ話は続いていたけれど気づいたら俺はさっき目指そうとしていたスーパーに向かって全力で走り出していた。
スーパーの前の交差点につくと、パトカーが何台も止まっていて警察官もたくさんいた。
そして、野次馬らしき人たちも
あたりを見まわして俺はハッとする。
ぐちゃぐちゃになった自転車と、フロントが少し凹み、ランプが割れている車が目に入ったからだ。
あの自転車…確かにおふくろのだ。
『洋子さん、自転車を買いに行こう?この近くは自転車の方が住みやすいよ』
4人で暮らすことになって家を引っ越した時にそう言って、おふくろに自転車を買ってくれた。
おふくろの好きな黄色味のある自転車だ。
年甲斐もなく明るい色を選ぶなぁなんて自分の母親に対してすごく失礼なことを思った事がある。
おふくろが事故に…
目の前が真っ暗になり全身が震え出す。
「あ、いたっ!諒太っ!!」
ふいに背後から義姉さんの声が聞こえてくるりと振り返る
義姉さんの目は真っ赤で、今にも涙がこぼれそうだった。
というか多分、泣いたあとだ。
泣いていても仕方が無いと自分を奮い立たせて俺を探しに出てくれたのだと今ならわかる。
「義姉さん…」
俺は情けないことに義姉さんを見て安心したのか事切れたかのように道端に座り込んだ。腰が抜けたのだ。
「諒太が家を出てすぐに警察から電話があって
お義母さん、事故にあったって…」
「知ってる」
ぶっきらぼうに、冷たく拗ねたような言い方をして少し俯きながら自転車を指さした。
義姉さんは「ッッ…」と息を飲んで目を逸らした。
そりゃそうだろう。綺麗な黄色味のある自転車にはべっとりと鮮やかな赤色がかかっている。
「あんなの見ちゃダメだよ」
と俺と同じように座りこんで自転車と俺の間に入った。
今更遅いとわかっていても"姉"という意識が見せてはいけない、とそうさせたのだと思う。
「今、お父さんが仕事場から車を走らせて病院に向かってるらしいから、私たちも行こう」
「わかった」
義姉さんに手を引かれてなんとか立ち上がる。
本当に、おふくろは事故にあったんだ
あの胸騒ぎは、気のせいなんかじゃなかったんだ。
あのぐちゃぐちゃになった自転車を見て、『大丈夫』と、「おふくろなら生きている』と、言える余裕なんてどこにもなかった。
俺は義姉ちゃんと一緒にタクシーを拾って、おふくろがいるという病院の名前を伝えた。
「○✕総合病院まで」
────────────────────────
カットシーン
「あ、いたっ!!翔っ!!」
「は?かける?」
「あ、間違えて彼氏の名前呼んじゃった…」
「おーい、今シリアスシーンなんだが?」
「仕方ないじゃんそういうこともあるある( ¨̮ )」
「てか、彼氏いんの。」
「?うん」
「ふーん。」
「え、なになに諒ちゃん。焼きもちかなー?」
「んなわけねぇだろ、うるさい。わざとらしく諒ちゃん呼びすんな。いつもしてないだろ!」
「私の弟が可愛い!!困った!!」
「あーもーはいはい。やり直すぞ」
「うー、ごめんなさーい」
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