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その日の夕飯の時、俺は、いつもと変わらない様子で
「おいしい」と言いながら、ごはんを食べる健吾さんにイラついていた。
ついに我慢ができなくなり、俺はイスから立ち上がる。
「ごちそうさま」
「こらこら。また全然食べてないじゃないか」
父親ぶるのは……やめろよ。
さっさと女を家に連れ込んで、ムカつくんだよ!
俺は健吾さんを睨んで、小さく舌打ちをしてからリビングを出ようとした。
そのときだった──
──カシャン・・・・・・!
金属のようなものが壁に当たる音がした。
俺が振り返って音がしたほうを見ると、床にはスプーン雌ちていた。
「なんでよ……っ!」
すると、泣いているような怒っているような表情を浮かべた遙さんが、そう叫んだ。
どうやらスプーンを投げたのは遙さんのようだ。
「どうしてお父さんに八つ当たりするの!?」
八つ当たりなんかじゃない。健吾さんがすべて悪いんだ。
「なんでよ!どうして、お義母さんがいなくなったからって、この“家族”を否定するの!?」
「おふくろがいなくなって、どうして家族だと思えるんだよ。」
たとえ、おふくろが天国へ行っても、おふくろを入れて“家族”だろ?おふくろの存在をなかったかのように振る舞っているのは…お前らだろ?
「もう…どうして!?もういやっ!!」
遙さんは、怒りに任せてテーブルの上にあった箸や皿、コップを俺に投げつけてきた。
俺は全部スっと避けるか受け止めていた。部屋が汚れる。
「もう嫌だ。疲れた…あんたなんて…家族じゃないっ!」
「遙。言い過ぎだ」
必死に遙さんを宥める健吾さん
でも、健吾さんに止める資格なんてない。
健吾さん、あんたは、おふくろ以外の女を連れ込んでいるんだ。それも、一度や二度じゃない。
おふくろのことなんか、もう忘れてしまったように…!
「どの口が、言い過ぎだとか言うんだよ。浮気野郎」
「え?」
バッ!と健吾さんを見たあと俺を見て、遙さんは困惑した
「……諒太、少しうるさいぞ」
「諒太…どうして…」
それを知った今、俺は、あんたを家族だとは思えない。
「・・・・・・っ」
「え、遙!?遙…!おいっ!」
突然、遙さんが健吾さんにもたれかかるようにして倒れた。遙さんを床に寝かせ、急いで救急車を呼ぶ健吾さん。
俺は遙さんを心配しながらも、散らかった部屋をじっと見ていた。この部屋は、まるで壊れた俺ら“家族”を表しているようだな。ボロボロだ。
じきに救急車が来て病院へと向かう──。
ここ、おふくろん時と同じとこか…
病院につき、健吾さんは処置室に向かい、俺は受付前のイスに座っていた。
今は、遙さんの顔も健吾さんの顔も見たくない。
ひとりになりたい気分だった。
「ごめん、遙さん…もう、戻れないんだよ」
シーンと暗い待合室の天井に悲しい声が響いた。
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