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遙さんには自傷行為の跡が沢山あったらしい。
そこから来る貧血や、疲労、睡眠不足、全てが重なって倒れてしまったとの事だった。
「俺は、そんな風になるまで…」
本当に何も、見ていなかったんだな。
それから1週間入院して、無事に退院。
健吾さん…義父さんは女を家に連れ込むのをやめ、真面目に過ごしはじめた。多分、義姉さんが倒れたことがいい薬になったのだろう。
──それから月日は流れ……俺の高校入試が終わった。
俺は受験生として勉強に励んでいたため、2人に「今までごめん」と言えずにいた。
…いや、勉強のせいにしているのはただの言い訳。
単に言う勇気がなかっただけだ。
それに、義姉さんは退院した日から俺を怖がって関わらないようにしていたし、義父さんも必要最低限のことしか俺と話さなくなり、俺は2人と話すタイミングを完全になくしていたのだ。
ある日の夕飯の時間。
義姉さんと義父さんの間には明るい空気が、俺のまわりには気まずい空気が漂っていた。
だけど、俺は2人に謝ろうとタイミングを探っていた。
「・・・・・・諒太」
ところが、俺が口を開く前に、義父さんが箸を置いて俺に話しかけてきた。
どうしたんだ…?
義父さんの顔がいつもとは違って真剣なものだったので、俺も箸を置いて「何?」と尋ねた。
「義父さんは遙を連れてこの家から出ていくことにした。お前はこのままマンションに住みなさい。大丈夫だ。お金はこっちで払うから」
え…?
突然の話に俺は目を丸くした。どうしていきなり…
俺は何も言えず、拳をグッと握りしめるだけだった。
「すまない」
なんで謝るんだよ。どうしてか教えてくれよ。
嘘だ、本当はわかっている。
2人は、俺が今でもふたりを拒否していると思っている。
だから、俺のことを思って別々に暮らそうって考えたんだろ?だけど、俺は…!!
今、言ってもいいのか?
「今までごめん」って。
でも、今ここでそんなことを言われても困るだけなんじゃないのか?
何を今さら……って思うだけなんじゃないのか?
結局、2人を困らせるのが怖くて、嫌われているかもしれない事実が怖くて…俺は……何も言えなかった。
勇気が出ず、恐怖にも勝てず……。
後悔だけが残るとわかっていても、伝えることができなかった。俺だけは、血が、繋がっていないし…。
数日後、家には俺ひとりしかいなかった。
ひとりぼっちのこの空間が寂しくて、何度も泣きそうになった。そして、俺はやっぱり後悔していた。
あの時に言えばよかった、と……。
さらに、時間は戻らないとわかっているのに、過去に戻りたいと何度も思っている。
俺のためを思って、別々に暮らすことを決めた義姉さんと義父さん。
「ごめん…」
おふくろの事ではなく、2人のことを思って、俺は眩いた
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