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Part 2―3
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ドクドクと心臓がうるさいほどに脈打つ。
ただ頭の中に流れるのは、転入生の言葉。
『なんでつらそうに笑うんだよ』
すべてを見透かされたような......
気持ち悪い、そう思った。
ぐるぐると廻る思考のなか、俺はどんな言葉をあの転入生に返していただろうか。
俺は温室のベンチに座りながら、先程の教室でのやりとりを思いだす。
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
《30分前、教室》
俺はなんとかチャラ男の演技を保ちながら、答えた。
「...別にぃー、無理に笑ってないよぉ~?適当なこと、言わないでくれるかなぁ」
「なっ、適当なことなんか言ってないぞ!お前のことを心配してやってあげてるんだぞ!」
あー、うざい。何様のつもりだよ。
だんだんとイライラしてくる。
このままだと、何かに当たりそうだ。
その時、救いの手は意外な人物から伸ばされた。
「なぁ、転入生。そろそろ席に着いた方がいいぜ?ホストがお怒りだからww 」
そう言って聖ちゃんを指差したのは、翔だった。
「兎在、いい加減にしないと教室から追い出すぞ」
「あっ、やべっ!また後でな!」
この転入生、先生の言う事は聞くんだな。
っていか、後でなんかやらないから。
それにしても翔......お前、BL とか王道にしか興味ないと思ってたけど、意外といい奴だんだんだな。見直したよ。
「ちょっと待って零くん。俺を勝手に冷酷な人にしないでくれませんか!?俺だって、趣味より友達の方が大事なんだからな!」
あれ?俺、声にだしてだ?
「全部、でてたぜww 」
マジか。俺はそれに気づかないほど、動転しているということか。
それでも今は......
「ありがとねぇ、翔ちゃん」
本当に感謝してる。あのままだったら、チャラ男の演技は崩れていたから。
ニッコリと笑えば、心配そうな顔を向けられた。
アキからの視線も感じる。
ははっ、心配かけちゃったなぁ。
自分でも無理に笑ってるのは分かる。
だから......
だから俺は、SHR が終わった瞬間、教室を飛び出した。
今はどうしようもなく、ひとりになりたかった。
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
「はぁ...」
自然とため息がこぼれた。
教室を飛び出した後、俺が来たのは校舎の裏手にある温室だった。
ここを見つけたのは偶然だったけど、今は俺のお気に入りの場所になってる。
人は滅多に来ないから、落ち着くにはもってこいの場所だ。
......アキ達、心配してるかな。
何も言わずに飛び出してきたから。
帰ったら、またアキにお説教されるな。お説教だけじゃ、済まないかも。
でもしばらくは、ここに居たい。
またいつもの笑顔ができるように。
自分の笑顔がつらそうだなんて、言わせないように。
黒く濁った過去なんか思い出さないように。
今はここで、静かに眠ろう。
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