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82〜晴山目線〜
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冷たい水が、頭の上から降り注ぐ。
こうでもしないと、冷静でいられない。
さっきの裕太は──────なんだ────?
胸の傷が気になる。
普通、あんな傷は生活上で付くものではない。
しかも、その傷を指摘してから裕太の様子は一変した。
何を考えてるかも、どこを見ているかもわからねぇ。ただ、俯いて、小さく震えるばかり……。
あの傷は何かがある────。
直感。そんな感じがする。
分かるのは、アイツが今、俺のことを考えていないという事だけ────。
そう思った自分のなかに、俺の知らない裕太を知ってる、俺の知らない……何かに嫉妬をした。
どんな理由であれ、裕太の心に残っている何か。
付き合いたての俺より、ずっと感情が重いはず。
そんなの許せない。
裕太の中にいるのは俺だけでいいんだ。
可愛くてしょうがないあいつは、俺だけを考えればいいんだ。
俺と身体を合わせてるのにもかかわらず、裕太を取り込むそれが憎い。
裕太の気持ちはまだ俺に完全に向いていないと、さっき思い知らされた。
そういえば確かさっき……何か呟いて……
どこかを見た瞳は無機質なのに、その『何か』を呟いた途端、大きく揺れたんだ。
なんだっけ……二文字……短い………………
『……』
「りん…………?」
単語なのか、一文なのか、名前なのか……定まらない二文字。
ただその二文字が、裕太の心に強く残ってしまっていることだけが、今明確だ。
「チッ……」
シャワールームに強く響いた舌打ちは、シャワーの音でかき消された。
水がぬるい……
身体が怒りで熱くなっていることがわかる。
水が────ぬるい────────
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