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「……俺に傾く事は無い?」
「ごめん、」
頑張って声を張っているのだろうが、大和の声音は弱々しい。
それがとても切なくなる。
どんな形であれ、どんな深さであれ、僕は大和を傷つけた。
「っ……ごめん……」
僕はスルリとベッドから抜け出し、置いてあった鞄を掴んで部屋を出た。
今、あいつと一緒にいるのはとても辛い。
早くショッピングモールに、戻って────
「おじゃましました……」
靴を履き、静寂に包まれた玄関から、その言葉は部屋まで届かない。
扉を開けて、家を出る。
小さな、腰ぐらいまでの門は、ギギギといびつな音をたてながらも開く。
ガチャッ
「裕太っ────」
「え……」
腰から、肩に手が這って、ドアから出てきた大和に抱き寄せられる。
視界には、焦点ギリギリの大和の顔が迫り──
「ん……む……」
抱きしめられた勢いが、大和との距離を深くした。
え、何……コレ────
真っ白になった頭には、熱と感触だけが神経を通して伝達される。
けれど、それは何か────というのは、晴山さんと付き合う前の僕では答えは直ぐに出せなかっただろう。
これは────キス────
「ゃっ……!!」
ドンッ
急にわれに返った僕は、思いっきり大和を突き飛ばした。
少しぐらついた大和の目は、怖かった。
だけど、それ以上に頭を巡るのは
どうしよう、どうしよう……?
僕今大和と…?なんで、どうして、なんで……?
晴山さんがいるのに、他の人とキスなんて──
ごめんなさい晴山さん……。
僕、僕────っ
ガチャンッ
「裕太っ……」
僕は勢い良くその門を出て、ショッピングモールの方に走り出す。
後ろから微かに聞こえた声はきっと空耳。
出来事や、考え事を全て振り払ってしまいたい。
全部、無かったことになんて出来ないけれど─
どうしよう────どうしよう────僕、他の人と────
最高の友達だと思っていた大和に告白され、キスをされ、どんな顔して晴山さんに会えば──?
運命と偶然は一致なのか────紙一重というのか────
その悪戯は少し過ぎるのではないか……?
今の僕には────
ポケットの携帯から、よく知った着信音が流れ出した。
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