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ビギナー5
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(葵語り)
少し前、神田くんのような人にレクチャーするにはどうしたらいいか悩んでいると、島田が丁度良い動画があると教えてくれた。
初心者でも見やすいし、生々しくないので、僕には全然物足りないけど神田にはぴったりだと言っていた。
好奇心の塊に言葉で説明するには、かなりの労力と忍耐が必要だと思っていたので、最初に見せることにする。
密室で見せるには俺が恥ずかしかった。人通りが無い道の隅なら、誰にもバレずにこっそりできるかなと思ったのだ。車のエンジン音の喧騒に紛れて、俺の羞恥心も隠してくれる。
本当に授業みたいで、情けないやら、複雑な気分だ。乗りかかった船だから、何年かかるか分かんないけど、無事に初体験が済むまで見届けてあげようと思った。
神田君を見ていると、どう対応していいか分からなくなる片桐先生の気持ちもわかる気がする。初心(うぶ)で真っ白な彼を汚すようで躊躇われるのだろう。
先生が、片桐はかなりのタラシだから神田にはそのうち飽きるだろうって言ってたけど、本当なのかな。そうしたら、神田君は一生恋愛に対してトラウマを背負うことになるだろうし、尚更放っておけない。
「あ、葵さん……やっぱり見てられないです。止めてください。こんなの葵さんの前で見れません。ひえー、恥ずかしい。うわ、うわ、色んなところ舐めてるし。舐め過ぎですって。もうだめ……無理。」
ストーリーじみていなくて、世間話しながら事におよぶそれは、再生して10分も経たないうちに真っ赤な顔の神田君に制された。これからの所でギブアップされたので、静かに動画を閉じる。ちなみに俺も見たけど、島田の言う様に物足りない感じはした。ごくごく初心者向けだ。
「もういいの?知りたがってたじゃん。見たくないなら……いいけど。」
「もういいです。これ以上は俺には無理です。はあ、心臓が飛び出るかと思いました。これが世に言うアダルトビデオってやつですか。凄いですね。勉強になりました。」
この程度じゃ勉強とは言わないが、神田君が満足したなら、ヨシとすべきか。
神田君は大人な動画を見たことが無いのだろうか。彼には刺激が強すぎたようだ。
段々と神田君が天然記念物みたいな存在に見えてきた。見ていて面白いから、飽きることがない。
「葵さん、俺が聞いたから調べてくれたんですよね。ありがとうございます。なんだか俺には遠い世界に思えます。付き合う資格がない奴がやり方を調べるとか、笑っちゃいますよね。はあ……俺、どうしたらいいのかな。春馬先生と俺は不釣り合いだ。好きなのは俺だけで、春馬先生は何とも思ってないに違いないです。情けなくて涙が出る。」
「そんなことない。片桐先生だって神田君のことちゃんと考えてくれてる。一人で負の思考に突っ走るなって。」
そもそも名前で呼ばせてる時点で、神田君のことを特別な扱いとしてるだろうが、それに彼は全く気付いていない。俺は、ネガティブになった神田君の頭をぽんぽんと叩いた。
何か自信に繋がるようなことがあるといいんだけれど。先生に相談してみようかな。
おそらくこのタイプは、何か好転材料があると、たちまち思考がポジティブで溢れるに違いない。単純すぎてチョロいから、攻略は簡単そうだ。
「大丈夫。神田君には俺がついてる。何でも相談に乗るから、不安にならないで。だから、この話は終わり。腹減ったし、ご飯を食べに行こう。先生の家の近所に安くて美味しい定食屋さんがあるんだ。そこのアジフライが絶品なんだよ。」
「そういえば腹が減ってた。アジフライ、俺も好きっス。うちのばあちゃんが作ったやつも美味いですよ。楽しみだな。」
俺たちは立ち上がって再び歩き始めた。
暫くして、先生とよく行く定食屋に着いた。機嫌の良い店のおばちゃんが生卵をサービスしてくれたので、幸先がいい感じがした。
依然として気分が乗らない神田君に元気になってもらおうと、先生の家で帰りを待つことにする。
夜が遅くなったので、1人で帰すには気が引けるのだった。
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