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夢の外へ2
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(熊谷先生語り)
野田と2人だと二軒目、三軒目も行くが、今日は葵が一緒だったので、一次会で終了した。
当の葵は、無理矢理割り込んできて、進路について説教したら酒を煽り、真っ赤な顔で今は俺の隣にくっ付いている。
なんとなく予想はしてた。また自らの進路を見ないフリをしていて、聞かれなかったら永遠に無かったことにするに違いない。
この逃げる癖をどうにかしたいと常々思っていたが、何をしても変わらないだろう。今回も結末が予想できそうだ。
ついつい手助けをしてしまいたくなる自分が、葵を駄目にしている気がする。
「せんせい……お腹いっぱいで、気持ちがいい。唐揚げが美味しかった。っくしゅ。」
花粉症の葵が、立て続けにくしゃみを連発した。3月はまだまだ寒くて、繋いだ手がほんのり温かく感じるが、夜風は冷たい。
俺たちは酔いを覚ますために一駅歩いていた。
「葵……さっきの話の続きだけど。」
「お嫁さんにしてくれるって話?残念だったなー。まだまだ先になるんだね。」
呑気な返事が返ってきて、半分ホッとした。やっぱり深く考えていないらしい。
「本当に家庭へ入りたいなら、お父さんとお母さんに報告しなきゃだし、ただ働きたくないって理由なら、ちゃんと向き合わないと駄目だよ。」
「分かってるけど、分からないんだ。自分が何したいのか、知らない会社で頭を下げている光景は想像できない。オッサンに怒られたくないもん。」
「それは俺も同感だ。お前はサラリーマンって柄じゃないと思うよ。別に、会社だけが働く場所じゃないし。接客業だって在宅ワークだってある。選択肢はいくらでもあるさ。」
「うん。本当は主夫したかったのに。先生が駄目だって言うから、一生懸命考えるよ。」
本当は葵を養うくらい問題はなかった。プロポーズも済ませてある。奥さんが男なだけで、何ら普通の夫婦と変わらない。だが、大学を卒業して社会にも出ず、そのまま家にいるのは、1人の男としていかがなものかと思うのだった。自立して、互いに支え合いたい。それが理想のパートナーというものだろう。俺は贅沢を言っている訳ではない。教師という職業柄、まっとうに歩んでもらいたいという考えはあるが、葵に限ってそれは通用しないと思った。
出来の悪い生徒程可愛い。どうにかしてあげたくなってしまう。
俺のお嫁さんになりたいと、嬉しそうに話す葵を思い出し、にやける顔が止まらなかった。
「せんせいー、何1人で笑ってんの?気持ちわるーーい。エロゆうき。」
「別に。とにかく、学内セミナーや、イベントは出るんだぞ。島田にもよく言っておくから。逃げること禁止。」
「ふわーーーい。じゃあさ、ちゃんと進路と向き合ったら、正式に一緒に暮らしてくれる?親にも説明して、引越ししたいからさ。俺はちゃんと覚えてるよ。お風呂で言ってくれたこと、今でも忘れたことないもん。指輪もあるからね。」
葵は、シルバーリングを右手に光らせて、広げた手のひらを夜空に向けた。俺の分は家に仕舞ってある。
「分かってるよ。」
一世一代のプロポーズを忘れられたら、困るのは俺なんだけどな。
短い返事をした後、葵を抱き寄せて、軽くキスをした。
高校で成長が止まったので、相変わらず華奢で細い。背も俺より低いが、ちゃんとした一人の男で、付いてるものも付いてるし、無駄な丸さは全く無い。
それでも惹かれてしまうのは何故だろうか。
「ん……先生、もっと……ちゅー、ちょうだい……」
中身もまだまだあの頃とは変わっていないと、舌を伸ばしてくる葵を愛しく思いながら、キスを続けた。
たぶん、家に帰ったら、そのままベッドへ雪崩れ込むだろう。
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