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夢の外へ12
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(葵語り)
青柳さんは、いい人だと思った。
年齢は50歳ぐらいで、痩せ型で眼鏡をかけている。これでカメラを持っていなければ、ただのオジさんで見過ごしていたかもしれない。だけど、沢山の人を被写体にしてきたレンズの奥は、俺を値踏みしているように感じた。
「葵君は、学生さん?雅ちゃんの紹介だからどんな子かと思ったら、以外に普通で安心した。」
「はい、大学生です。」
答えながらシャッター音を浴びる。どっちに集中していいのか、迷って答えに止まってしまう。真面目に考えるとすごく恥ずかしいことをしている気がするし。
「あのね、撮られることは忘れて、会話に集中してくれればいいから。自然な姿を撮りたいんだ。まずはシャッター音を流してみよう。では、バイトはしてる?君のこと沢山聞かせて。」
そういう間にパシャパシャ撮られている。うぅ……慣れない。なんだか、いかがわしいDVDのオープニングを彷彿とさせるような気がした。
「バイトは、カフェでやってます。」
「やり甲斐がありそうだね。葵君は、カフェエプロンが似合いそうだ。イケメン店員さん。」
「そんなことないですよ。店長がイケメンなんで、お客さんはみんなそっち目当てです。」
「そのカフェはどこにあるの。」
「駅の南口から出て、裏路地にある、caféRってところです。」
青柳さんの声が高くなった。
「あ、知ってるよ。スイーツが美味しいお店だ。僕も行ったことがある。確かに店長さんが男前だった。その時のデータは残ってるかな。ちょっと待ってて。」
青柳さんは、鞄からタブレットを取り出し起動した。大量のデータから、ある写真を画面に出し、俺に見せてくれる。慧さんと春のメニューが何点か収められていた。
「すごい。ここです。この店長が人気者なんです。春メニューも美味しかったな。イチゴのジェラートが特に人気だったんですよ。」
「そうなんだ。葵君が働いているなら、また行こうかな。お仕事モードの君も撮りたい。」
「是非来てください。青柳さんが来てくれたらサービスしますよ。」
嬉しくて笑うと、聞いたことのない連続シャッター音がこだました。そうだ、俺は写真を撮られていたんだ。
「よし、大分リラックスしてきたね。場所を変えよう。海の方へ行ってみようか。葵君は海が好き?」
「はい、大好きです。」
「よかった。もう少し付き合ってね。」
荷物を纏め、座っていたベンチから立ち上がり歩くよう促された。僕の後ろを青柳さんが微妙な距離を取って歩いていた。気にせず海を目指すことにする。後ろ姿も撮りたいらしい。
そう言えば、公園を出る少し前に先生の声が耳に入った気がしたけど、気の所為かな。まさかね……見にきてくれたとか。
モデルと言っても雑談ばかりで仕事とは違う。本当に気軽なアルバイトだ。先生に何て報告しようかぐるぐる考えた。
海の見える公園は、歩いて20分ぐらいのところにあった。近付くにつれて潮の香りがする。腕を広げて胸いっぱいに吸い込むと、先生と行った海を思い出して、また会いたくなった。
途中、データを処理したいと言う青柳さんの為にコーヒーショップへ寄る。
甘いアイスココアを注文して、ザラメが付いたドーナツを頬張る。口に広がる甘さに目尻が下がった時に、また写真を撮られた。気分は良くないけど、段々慣れてきたようだ。不快感は消えつつあるみたい。
「ちょっと撮りすぎたみたいだ。データをこっちに落とすから、少しの間休憩してて貰えるかな。待っている間、今までの作品見てみる?雅君もあるよ。」
今度はノートパソコンを取り出して、青柳さんが作業を始めた。鞄が重そうだったのは、このせいだったのか。
暇になった俺はさっきのタブレットを借りて、写真を見始める。日常から、ありとあらゆる場面を切り取って写真に収まっていた。
まず量が膨大だ。タップしていくと、雅さんではない緊縛写真が出てきた。
「わぁ…………」
女の人だぁ。
半分裸の着物姿で縛られている。俺は男の身体にしか興味がないので、性的な意味では興奮しないが、色気は感じることができた。
姉ちゃんがいるので、女の裸は見慣れている。姉ちゃんがよく裸でウロウロしていことを思い出した。今は先生の家で暮らしているから、あまり会わないけど相変わらず元気だろう。元気だけが取り柄の人だ。
しばらく、写真をまじまじと眺めていた。
脂肪が縄に食い込んだりするのは、苦手かもしれない。ムチムチしている太ももも同じくちょっと気持ち悪い。
なんかこう……脂肪よりは筋肉がいいな。お尻もキュッと締まった小さい方が好き。女の人の色気は息が詰まりそうになる。
「その写真ね、評判がいいんだ。可愛い女の子の苦悶の表情は特にいい材料になるんだよ。」
「ふーん……そうですか。」
随分前から分かってはいたけど『普通』の男と趣向が全く違うことを改めて気付かされた。
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