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夢の外へ13
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(葵語り)
「まぁ、これは一般的なものに近いけど、好き嫌いはあるからね。葵君は苦手かな?」
「…………で、でも綺麗だと思います。」
着物の柄は確かに綺麗だった。白地に紫の花が咲いている。見る人が見たら興奮するだろう。やっぱりぷにぷにしているのが苦手だ。
「ははは、いいよ。こういうのは性的趣向が現れるから。さて、もう少しでデータ移動が完了するから、雑談しよっか。僕はね、被写体として君にすごく興味がある。もっと仲良くなりたいとも思うんだけど……どうかな?」
「……仲良くですか……」
「そう。もっとプライベートな写真を撮らせて欲しい。」
オープンテラスの丸い机の上で、ココアを飲もうとした俺の手を青柳さんが撫でてきた。湿った手と、普通じゃない触り方に身震いがした。思い出したくもない京都での出来事が頭を過る。青柳さんの目があの時の松山さんと被り、フラッシュバック手前まできた。
どうして俺はこういう変態チックな男の人に好かれるのだろうか。自分じゃどうしようもないと思っていたが、島田曰く引き寄せているそうなので、ほぼ己の所為になる。情けなくて鼻の奥がツンとした。ああ、めんどくさい。だけど、俺は20歳を過ぎた大人なのだから、自分の身は自分で守る。先生には頼らない。携帯でも呼ばない。1人でなんとかしよう。
「俺、モデルには向いていないみたいです。だから、今回きりにしようと思って。」
松山さん事件で学んだのは、『ハッキリ自分の考えを述べる。嫌なことは嫌だと言って拒否する』だった。俺の中途半端な返事の所為で、物事は悪い方向へと進んでいったのだ。
「向いているかは、作品を見てから言って欲しい。最近の僕の中ではかなりの出来だよ。まだお試しの段階だけど、スタジオできちんとしたスタッフに付いてもらって撮り直したら、最高の作品が生まれると思うんだ。」
「そんなことないですから、もっと違う人を見つけてください。撮られるような立場は御免です。」
「謙遜かな。可愛いね。さっきの写真みたいに縛らせてくださいとか言ってる訳じゃないんだよ。でも、君が縛られたら、本当に凄いことになるだろうな。それは追々調整しておくとして……さぁ、海の見える公園へ行こう。」
どこが謙遜になるのかさっぱり分からなかった。人の話を聞かないオジサンだ。
「あの、だから、今日限りにしてもらえませんか。モデルはお終いにしたいです。」
「分かった分かった。後でゆっくり話を聞くから、次の撮影に移ろう。」
軽くあしらわれて不快な気分になる。
むう……雅さんに後から言いつけてやるもんね。
公園に着くと、自由に歩いていいと言われたので、人の話を聞かないオッサンを無視して散歩することにした。海は大好きなので、毛羽立った気持ちを紛らわせてくれる……筈だったが、またあのオヤジが話しかけてくる。
「葵君には、恋人はいるのかな?」
「…………いません。」
「嘘でしょ。結構年上の恋人がいるって雅君から聞いたよ。年上が好きなんだね。僕はね、年下が好きなんだよ。奇遇だ〜。」
ぜっんぜん奇遇じゃない。
知ってるなら聞かなきゃいいじゃないか。またまたムッとした。こいつは俺の上っ面を写真に撮ることしか考えていない。
「やっぱり、年上の彼氏はいいのかな。葵君はバランス的に腰が細く見えてセクシーだね。やっぱり細くていい。お尻も小さい。一糸まとわぬ姿を撮りたくなる身体だ。」
「ひゃぁっ、やめてくださいっ!」
完璧にセクハラオヤジだ。いい人だと思ったのに。雅さんの紹介だから、今日は何とか乗り越えようと思ったのに。サラッと流してやろうと思ったのに。くそう。
「柔らかい。彼氏の気持ちが分かるなー。オジサン興奮しちゃうぞ。」
「やめろよっ、変態オヤジっ。気色悪い。」
思わず出た自らの大きな声に驚きながら、変態オヤジの手を払いのけた。
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