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海へ出た初夏の旅8
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(葵語り)
美味しい料理とお酒で、最高に気分が良かった。話を聞いてくれる雅人さん達は優しくて、俺は調子に乗りぐびぐびとお酒を煽った。普段は先生にあんまり飲むなと言われてるから、量を気にせずに思い切ることができたのは初めてだ。なんだか楽しい。
「葵君、いい飲みっぷりだねぇ。ふふふ、可愛い。この浴衣、祐ちゃんのでしょ。よく似合ってる。」
隣に座っている雅人さんが頬をぷにぷにと引っ張ってきた。酔いは軽く回っているようだが、意識はある。
「全然可愛いくないですよ。」
「俺さ、祐ちゃんも好きなんだけど、葵君みたいな無自覚系もタイプなんだよね。純情そうなフリして実はエロいみたいな子、大好きなの。ねぇ、酔った勢いでいいからやらない?祐ちゃんには黙っとくからさぁ、絶対に気持ちよくさせてあげる。身体の相性を確かめてみようよ。」
この大人は何言ってんだか……
距離があるはずだった雅人さんが、いつの間にかめちゃくちゃ近くにいた。浴衣の背中越しに雅人さんの体温を感じる。俺の肩に軽く顎を置いていて、柔らかい髪が首をくすぐった。
先生とは違ったいい匂いがする。先生はタバコが交じった男らしい香りだけれど、雅人さんはオーデコロンのような人工的な柑橘系の香りだった。そう言えば、雅人さんも先生だ。俺は先生に縁があるみたい。
「ダメです。そんなの良くないです。」
「ダメかどうかは試してから決めてよ。」
「先生が悲しんじゃうからダメです。」
「内緒でお見合いして結婚しようとしてた人だよ?上手く行ったら結婚してたかもしれないのに、葵君を悲しませた人でしょう。仕返しぐらいしてみたらいいじゃない。」
「うっ、そんな……こと……」
そんなことないと思う。今でも拭うことができない、先生がもしかしたら結婚しちゃうかもしれない恐怖がぶわっと押し寄せてきた。
「結局あっちの人間は異性と結婚したがるんだよ。俊さんもそうだよ。あっという間に子供を作って、過去にされちゃうんだ。俺にとっては大切な思い出が、向こうには人生の過ちに入れられる。」
焼酎のロックを一口飲んだ後、雅人さんは俺の肩に体重を掛けてきた。人恋しいのは雅人さんのほうじゃないか。
「それに……祐ちゃんが悲しむって言うけど、葵君的にはどうなの?俺は魅力的じゃないのか、正直に教えてよ。」
「雅人しつこい。葵君が嫌がってるぞ。」
俊さんが注意をしても、聞く耳持たずの雅人さんは、俺に抱きついてきた。酔ってなかったら完全に拒否してたけど、これくらいなら許せる範囲だ。ついでに頭をポンポンと摩ってみる。甘えん坊さんなのかもしれない。先生とおんなじだ。
「えっと……正直に言いますけど、雅人さんは俺の好みのタイプじゃないです。」
「ひどっ……俺、勤務医だけれど、将来有望だよ。そのうち開業するもん。お金いっぱい持ってるよ。どこがだめなのさ。」
「お金は少しでいいです。たぶん、性格が合わないです。お金持ってるアピールも苦手です。俺、こう見えても我儘なんで、やっぱり先生じゃなきゃダメだと思うんですよね。受け止めてくれる人がいいんです。雅人さんはカッコいいし、お医者さんなんだから、いっくらでも相手がいるでしょ。」
「結局惚気かい。こんな田舎で相手を探すのは大変なんだよ。こうなったら力尽くでも葵君をモノにしようかな。」
「えええ、やだ。それだけは絶対にやだ。力なら俺のほうが強いですよ。負けません。離れてください。」
身の危険を感じたので、雅人さんを引き剥がそうとしたが、力が強くて思うようにいかない。ふと、雅人さんを見ると、ニヤリと笑った気がした。
「だーかーらー、やってみないと何でも分からないんだって。あ、虫が付いてる。」
「どこですかっ………うわぁっ………」
不意打ちで頭を両手で固定され、気付いたら唇と唇が重なっていた。今更ながら酔いが回ってきて、頭がぼーっと靄がかかったように気怠い。
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