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1年半後①
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(葵語り)
「葵、葵、起きて。」
やさしい声で名前を呼ばれた。
ここはどこだっけ……。
気持ちのいい微睡みの中、微かに煙草の匂いがする柔らかいものが俺の唇を挟み、温く湿った何かが割り入ってきた。
そして、それはだんだん深い所へ侵入し、いやらしく俺の口内を舐めまわしてくる。
寝ている無理な体制の所為で段々息が出来なくなってきた。
く、苦しい………
目を開けると、先生のどアップに、またかと溜息をつきたくなる。
きっと口の周りは先生の唾液で光っているに違いない。
「先生、またこんな起こし方して。苦しいから止めてっていつも言ってるでしょう。」
優しい指先が俺の前髪を掻き分けた。
遠くでクーラーの唸る音が聞こえる。
「おはよう。ちゃんと起こしたよ。起きない葵が悪い。だから強硬手段に出ただけだ。それに早く起きないと間に合わないぞ。」
「今日って何かあったっけ。ええと……」
寝起きで頭が回らない。
「忘れたのか?あんなに楽しみにしていたのに、残念だな。」
ベッドサイドに座った先生越しにハンガーで吊るされたワイシャツが目に入る。
それと同時に意識がハッキリとし、鮮明なヴィジョンが流れ込んできた。
「うわっ、まだ時間大丈夫?」
慌てて飛び起きた俺に先生が目を細めて笑う。
「やっと思い出した。式は午後からだから全然余裕だ。ほら、顔を洗っておいで。朝ご飯を食べよう。」
芳ばしいトーストの香りが部屋中に広がっている。時計は10時を示していた。
俺は先月の7月に20歳になった。
高校を卒業して約1年半経ち、大学2年生になる。高校生の頃から通っていた先生の家には、ほぼ入り浸りで、世間で言う『半同棲』状態だ。
薄々感づいているのかもしれないが、うちの親は何も言わない。だから時々家に帰って顔を見せるようにしている。
そして、先生は俺の母校から異動になり、別の県立高校で勤務している。まだ生徒指導もしているようだ。
取り巻く状況は少し変わったものの、俺と先生は相も変わらず仲良しだ。
前よりも絆が深まったように思う。
そして、今日の午後からは島田の兄、悠生さんと睦月さんの結婚式に先生と招待されている。
好きな人の隣で、お洒落をして、美味しいものを食べれるなんて、夢のようだ。
しかも、披露宴が行われる所はスイーツが有名なレストランで、実はそれが1番楽しみだったりする。
「葵、早く食べようよ。お腹すいた。」
「はーい。」
先生の声を背に、俺は急いで顔を洗いに行った。
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