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嫉妬と羨望5
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(葵語り)
家に帰り、先生からは、いつものように説教と注意を小一時間程聞かされた。
松山さんがことあるごとに、俺を呼んで話し相手にしていたことや、食べ物で釣ろうとしてたことには何となく自覚はあった。
それに下心が混ざっていたのは、全然気付かず、ただ仲良くなりたい為だと思っていた。
「だって、そんなの分かんないよ。先生の言う通りでも松山さんは悪い人じゃない。俺がちゃんと態度に示せば、きっと分かってくれるよ。」
それに、デパートで売られる商品に関われることが素直に嬉しかった。
宝石の様な食べ物を選んで売り出していく松山さんのセンスにも憧れていた。素敵だなと思う。敬遠していた経営学やマーケティングにも興味が出ていた。
「いいや、葵には絶対に見抜けないと思う。仮に、部屋に連れて行かれて、裸にされて挿れられてやっと気付く位お前は鈍感だ。
とにかくバイトは辞めろ。村瀬君には俺から言っておくから。今まで通り、俺の帰りを待っていてくれればいいよ。な?いい子だ。」
わしゃわしゃと俺の頭を撫でて、先生はベランダへ煙草を吸いに出て行こうとした。
店では俺の顔にわざと煙を吐いて不快感を露わにしていたのに、俺が従うと思った途端、安心したらしい。
全く解せない。何故、辞めないといけないのか。俺は辞めたくない。
松山さんともっと話をしたいし、学びたいことが沢山ある。
この人は譲ることをしない。言い出したら我を通すので、いつも俺が合わせていた。
俺を全く信用してくれない。
先生という恋人がいることを松山さんにも伝えるし、2人っきりになることも極力避ける。そんな雰囲気にならないように努める。
なのに……なのに……
ふつふつと今まで先生に感じたことのない感情が心の中で渦を巻いた。
松山さん云々よりも、この人の傲慢さに反抗したくなった。
「いやだっ、絶対に辞めない。俺はバイトを続ける。」
深夜のマンションに俺の声が響き、ベランダへ入ろうとした先生の足が止まる。
「先生はいつも俺が従うと思っているけど、今回は嫌だ。俺が決めたことだから最後までやる。」
火をつけようとしていた咥え煙草が先生の口元からポロリと落ちた。
元々アルバイトだって先生の許可を取る必要はないのだ。
「そんなに松山ってやつが気になるのか。葵は俺よりそいつを選ぶの?」
「だから、違うって。松山さんか先生を選ぶとかそういう次元の問題じゃない。先生は、俺をすぐ言いなりにしたがるけど、俺だってやりたいことは自分で決める。だから、辞めない。絶対に辞めない。」
「それでも辞めろって言ったら、葵はどうすんの。俺のために辞めて欲しいって言ったら。葵が心配なんだよ。」
「…………だったら……もう先生と会わない。心配しなくてもいいから。俺を全く信用してくれない、そんな先生は大嫌い。」
俺の小さな反抗心は2人の間に大きな溝を生もうとしていた。
先生と睨み合ったまま、お互い一歩も譲らず、しばらく動かなかった。
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