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嫉妬と羨望11
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(葵語り)
「この間の保護者さんと何かあった?さっきすれ違ったから。」
松山さんが俺の隣に腰を下ろした。
9月も中旬を過ぎると、朝晩はめっきり涼しくなる。知らないうちに秋の雰囲気がして、寂しい気持ちになった。毎年、夏の終わりはなんとも言えない哀愁が胸に広がる。
俺は貰ったマカロンを大切に膝上に抱えた。
「ええ。まあ……喧嘩みたいなもんです。あの人は頑固だから。」
神田君は先生の何かを知りたいけど、聞くのが怖い。頑固だけど、強引でいつも俺のことを1番に考えてくれる先生が心底恋しくなった。
そうだ。先生は俺のものだ。他の誰も独占する権利はない。
さっきは、ただ驚くだけで何も聞くことができなかった。責めることも、問いただすこともできなかった。
松山さんがすれ違ったと言うなら、追いかけたら、今ならまだ間に合うかもしれない。俺は立ち上がろうと腰を浮かせた。
「そっか。一緒にいたのは生徒さんかな。仲睦まじく腕を組んで歩いていたよ。」
「えっ………」
怯みそうになったけど、先生を信じる。
「制服着ていたし、この間、葵君は『先生』と呼んでいたでしょう。学校の先生かなと思っていたよ。そんなことはいいからさ、京都はどうしようか。あれ、ねぇ葵君、どこにいくの?」
松山さんの言葉を背に俺は走り出した。
先生がいつも停める駐車場は分かっている。
邪魔なカフェエプロンを乱暴に取り、近くにあるであろう先生の車を目指した。
夢中で走っていると、駐車場手前に2つの影が見えた。なんだか激しく揉めているようだ。
よく見ると、先生らしき男の人と神田君が取っ組み合いの言い争いをしていた。
「離れろってさっきから言ってるだろ。お前のせいで、葵に誤解されたんだよ。お前なんか時田の好きにされていればよかったんだ。メガネデブといちゃついてろ。次は絶対に助けてやらないからな。」
「ごめんなさいって言ってるじゃん。だって先生の大事な用が何か知りたかったんだよ。俺が悪かったから。なんなら、もう一回葵さんに会いに行ってみればいいじゃん。諦め早すぎ。勇気無さすぎ。」
神田君が先生の腰に抱きつこうとするも、先生が避けて2人は転倒した。
「無理だよ。あんな顔されたらどんな話も言い訳にしか聞こえない。一回大嫌いって言われてんの。また言われたら立ち直れない。俺だって怖いものもあるんだ。」
そっか。だからあんなにすんなり帰ったんだ。もう……可愛いな。
まるで小さい子供みたいだ。
不満に思ったら諦めずに話し合わないと駄目なんだ。黙って出ていくとかやってはいけなかった。俺は器用な方じゃないから、向き合うしか方法を知らない。
「……あのう……先生っ……」
俺は意を決して、大きな声で2人に話し掛けた。
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