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暗転からの脱出4
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(葵語り)
想像はしていたが、思った以上にこの人との時間は苦痛だった。
旅館は全室離れの造りになっており、案内の仲居さんが去ってから、何をしたらいいのか迷う。 話すこともない。
しょうがないから温かいお茶を淹れた。
一口飲むと、冷えていた身体に血が巡り、生き返るようだった。美味しい。
これが先生とだったら、何をするでもなく隣にいるだけで幸せなのに。
「食事は9時からじゃないと用意ができないって、残念だったね。じゃあ、お風呂に入ろうか。客室露天風呂にする?それとも大浴場に行く?葵君のいい方にしよう。」
ぐるりと手で回っていた湯のみが止まる。
「えっ……」
風呂に入る?松山さんと風呂……絶対に嫌だ。しかも、一緒に入る前提で場所を聞かれている。大浴場なら他のお客さんも居るから、一緒に入っても問題ないだろう。客室露天風呂は申し訳ないが御免だ。
松山さんが俺をそういう目で見てる以上、触られるのも裸を見られるのも勘弁だった。
「あ、あの……」
「何?風呂だよ。早く入ってゆっくりしようって言ってんの。まだ悩んでる?」
またイライラし始めている。どんだけ短気なんだよ。短気は損気という言葉を知らないのかな。
「じゃあ、大……」
大浴場と続ける予定だったが、とあることを思い出した。俺の身体って、もしやキスマークだらけじゃなかったか。先生との仲直りエッチ後、裸で寝たために全身に付けられていた。試しに上からシャツの中を覗いたら、薄くなっている斑点が数個確認できた。
ばか。ばかばか。先生の大ばか。
「……克久さん、俺、客室露天風呂に入ってみたいです。けど、恥ずかしいから先に1人で入ってもいいですか?今もすごく緊張してて……」
今まで意識してやったことのない上目遣いで必死に訴えてみた。
頼むから一緒に入るとか言わないで。
「葵君、分かったよ。入っておいで。そうだよね。流石に恥ずかしいか。あ、足を消毒しよう?」
「だ、大丈夫です。お風呂で洗いますから。平気です。」
さっき転んだところはハンカチで応急処置をしたが、血が滲んでいた。
俺は逃げるように浴衣を抱えて、隣の客室風呂へ行った。
「痛ってえ……あいつめ。絶対に許さない。何倍にもして仕返ししてやる。」
身体を洗い内風呂に浸かった。膝は派手に怪我をしていて、痛さに怒りがこみ上げる。
逃げ道を探そうと外に出ると、 星空が広がっていた。明かりだけで歩けそうな程、大きな月が辺りを照らしている。
裸のまま露天風呂周辺を探索する。周囲から見えない造りにはなってるけど、出れなくはない。なんとか逃げることは可能なようだ。とにかく必死で民家まで走るしかない。暗いからうまく前を進めるか分からないのが不安だけど。
「葵君。何してるの?湯冷めするよ。可愛いお尻が見えてる。」
裸のまましゃがんでブツブツ言っている俺に今1番聞きたくない声が掛かった。
振り返ると……奴が裸で腰にタオルを巻き立っていた。
咄嗟にお尻を隠す。
「ちょっとお客さんが来ることになってね。急いで入ることにしたんだ。葵君も一緒に入ろう。こっちへおいで。逃げようとしたら……分かってるよね?」
松山さんは俺の考えを見透かしたように、不気味に笑った。
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