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暗転からの脱出8
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(熊谷先生語り)
「何が目的?」
低い声で松山が言った。
「2度と葵の前に現れないこと。caféR、大学、駅前、姿を見かけたら直ちに約束は反故されたとみなして写真をばら撒く。その旨を念書として紙に書いてもらう。」
野田が立ち上がって、念書用の便箋とペンを取りに行った。松山と俺が2人になり、不穏な空気が漂う。
「あーあ、熊谷さんが大切にしてきた葵君のケツの締まりはなかなか良かったよ。少しでも俺の形を覚えてくれてたらいいけど。葵君にいつでも相手するって言っておいてね。もうちょっとで喘がせることができたのに、残念。君の恋人汚しちゃってごめんね。あれ、怒った?」
急に砕けた話し方に変わり、にやりと奴は不気味な笑みを湛えた。
だからさ、葵は汚れてないっつーの。
いちいち煩い。
「そんな怖い目で見ないでよ。たかが挿れられたくらい、減るもんじゃないし。中で出してもいないよ。まあね、俺のを咥える葵君がもっと見たかったな。」
「っお前、いい加減にしろっ。黙れ。」
衝動的に髪を引っ張り壁へ顔面ごと押し付けた。メリメリと音が聞こえてきそうなくらい力が入る。
それでも松山はまだ何か口走っていた。
「終わったらここを直ちに去れよ。次に姿を見た時は、殺す。」
不気味に笑う松山は葵の言ったとおり不快で、頭がおかしいのではないかと思われた。ヘラヘラし過ぎだ。
「祐樹……たぶんこいつは正気じゃないから真面目に相手をしても無駄だよ。どっかでネジを落としてきたみたい。俺も疲れた。」
腕の紐を外し、野田が持ってきた便箋に書かせ、最後は拇印を押して念書は完成した。効力云々より、こういう文書が存在することに意味があるのだ。
忘れずに葵の携帯番号とメールアドレスも消去する。
それからは奴の姿は見ていない。今もデパートのバイヤーをやっているのか、それすら分からない。
長い一日が終わろうとしていた。
くたくたになって野田と共に鍵を開けて部屋に帰ると、宣言通り葵はベッドで寝ていた。
安らかな寝顔に安心する。
食事を済ませ、食器を仲居さんに下げてもらった後、順番に風呂に入り寝ることにした。
「ベッドは君たちに貸してあげるよ。俺は隣の和室で寝るから、何かあったら呼んで。……おやすみ。」
「おやすみ。今日は本当にお疲れ様。野田、ありがとな。」
和洋室の洋室にはシングルベッドは2つあり、迷わず葵のベッドに潜り込む。さっきは気が付かなかったが、泣きながら寝ていたようだった。
目元に薄っすらと涙の痕が見えた。
しかし、野田が京都へ行こうと提案してくれなかったらと考えただけでゾッとする。
第六感が働いて悪い予感がする場所へは1人で行かせない。暫くは束縛という名の監視をしようかな。そうじゃないと俺の気が済まない。自分の不甲斐なさを嫌という程感じた。これ以上、同じようなことで葵を泣かせたくなかった。
「………辛かったよな。ごめんな。」
柔らかい髪を指先で撫でると、パチリと葵の目が開いた。なんだ、起きてたのか。
「先生………こっち来て。」
「ん……なに。」
いつもと逆で、葵の胸に引き寄せられた。葵特有の甘い匂いがする。俺の為だけの、淫靡な香りだ。スイッチが入ると、更に香り立ち、俺を誘ってくるのだ。
それに、浴衣姿は反則だろう。
「………眠れないか?」
「うん。あんまり。すぐ目が覚めちゃうんだ。………ねえ、先生。俺を抱いてくれない?」
「抱く?今もやってるじゃん。」
「……違う。その抱くじゃない。」
言いたい意味は分かっていたが、ワザとはぐらかした。葵は自暴自棄になっているのかもしれない。
「俺は先生とセックスがしたい。」
真面目な顔をして次はダイレクトに言われた。
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